ところが、こうして大幅に経費を削減できた経営陣は驚きの行動にでる。自分たちになんと200億円の株式ボーナス(ストックオプション)を支給したのだ。当然、客室乗務員をはじめとした労働組合は経営陣の行為を糾弾した。
しかし、本来は経営陣の暴走を止めるのが役割であるはずのアメリカン航空の社外取締役までが、「わが社の経営報酬は航空会社を含む他のアメリカ企業と同様に市場の動きに基づいている」とお墨付きを与え、コーポレート・ガバナンス上「何の問題もない」と結論づけたのだ。
従業員に対する340億円の給与は会社の「負債」。経営陣は、毎年続くこの負債のカットに成功して会社の「価値」を上げたのだから、200億円のボーナスをもらうのはなんらおかしいことではない、という理屈だ。
あなたはこの判断を理に適っていると受け入れられるだろうか?
普通の日本人の感覚なら「従業員が給料を削減されたのだから、経営陣も給料を削減するのが当たり前」と考えるはずだ。
しかし、これを「当たり前」と思わない国が世界にはふたつだけある。
私がこの事例を80カ国の国家公務員に講義して意見を促したところ、「会社は株主のものであり、企業の価値を上げることに貢献した経営陣がボーナスをもらうのは当然だ」と答えた国が当時2カ国だけあった。
アメリカとイギリスだ。
目標の短期化すればするほど
イノベーションを起こす力が失われる
ビジネススクールでは、「会社は株主のものであり、社長および取締役の使命は、できるだけ短期間で株主利益を最大にすることである」と教える。
この考えに基づいて経営をすると、例えば100億円のリターンを得ようとするとき、10年ではなく5年、3年で実現しようとして、どんどん目標を短期化していくことになる。
結果、その組織からは「イノベーション」を起こす力が失われる。
なぜならイノベーションを起こすためには時間もお金も必要で、成果が出るまでの期間や費用を正確に予測することは不可能だからだ。







