じつはイノベーションの聖地として有名なシリコンバレーは、形骸化している。自分でゼロから新しいものを生み出すのではなく、他人の発明を真似たり、お金で買ったりする会社が増えているのだ。

 ところが日本ではいまだに「シリコンバレー崇拝」がある。

「シリコンバレーでは、○○が常識!」

「シリコンバレー流の仕事が世界最先端!」

 書店には「シリコンバレー式○○の秘訣」といった本が並ぶ。

 経済産業省の旗振りによるプログラムで年間に何千人もの若者が見学に訪れているが、私がベンチャーキャピタリストを始めた頃のような革新的なベンチャー企業はもはやない。

「シリコンバレーを見習おう」
知ったかぶりを振りかざす人がいる

 それでも識者と呼ばれる人たちの中には、

「アメリカは先を進んでいる。シリコンバレーを見習おう。アメリカ式の経営では株主重視が常識。日本は遅れている」

 という知ったかぶりを振りかざす人がいる。はたしてそれが本当なのか。ぜひ、あなた自身の価値観で判断してほしいのだ。

『THE BEST WORK「最高の仕事」を生きる』書影THE BEST WORK「最高の仕事」を生きる』(原 丈人、サンマーク出版)

 今も欧米の優秀な学生は、ハーバードやスタンフォードのビジネススクールに通う。でも、私の実感として経営大学院は「しゃべり方教室」であり、「そろばん教室」に過ぎない。

 自信満々の態度で1のことをまるで10のように表現し、聴衆を説得する話し方の練習をする。

 株主と自分たちのためにいかに「短期間」で「株価」を高くするかのそろばん勘定を学ぶ。

 しかし、堂々と話ができ、銭勘定がうまいからといって、いい人間とは限らない。もちろんビジネススクールには、企業の社会的責任や「企業は何のためにあるのか」を教えてくれる先生もいる。しかし彼らは主流にはなれない。ビジネススクールは彼らをメニューのひとつに加えているに過ぎないのだ。