米シリコンバレー銀行の経営破綻により、金融業界が揺れている。現時点では日本の金融システムへの影響は少ないとみる向きが専らだが、実は日本の地方銀行は今回の破綻によって含み損という“時限爆弾”を抱えることとなった。窮地に陥る地銀はどこか――。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)
米SVB破綻で世紀の再編決定
UBSがクレディ・スイス買収へ
金融業界が世界規模で揺れている。事の始まりは3月10日。テック関連企業を中心とした取引の拡大により、全米16位にまで資産規模を膨らませていたSVBファイナンシャル・グループ傘下の米シリコンバレー銀行(SVB)が、経営破綻したのがきっかけだ。
米銀の破綻としては史上2番目の規模であり、衝撃は決して小さくない。12日には、暗号資産(仮想通貨)関連企業との法人取引を核としていた米シグネチャー銀行も経営破綻に追い込まれた。16日には、中堅銀行である米ファースト・リパブリック・バンクに対して米大手銀行11行が資金繰り支援を発表するなど、米銀を中心に経営不安が連鎖している。
さらに余波は米国外にも広がり、19日にはド級の大型再編が発表された。スイスの金融最大手のUBSが、同じくスイスの金融2位であるクレディ・スイス・グループを、30億スイスフラン(約4200億円)で買収することで合意したというのだ。
クレディ・スイスを巡っては、米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントとの取引による巨額損失や投資銀行業務の不振など、不祥事やリスク管理の甘さによる顧客流出、業績低迷問題がもともとくすぶっていた。
そこにSVB破綻で高まった金融不安が相まって15日に株価が急落し、急転直下でUBSとの統合となった。
それだけ、事態は緊迫していたということだ。株価急落からわずか4日での世紀の再編決定には、米投資銀行大手のリーマン・ブラザーズの経営破綻を食い止められず、世界的な金融危機を招いたリーマンショックの二の舞いを演じまいとするスイス当局の強烈な後押しも垣間見える。
金融業界は、危機の深刻化を何としても阻止しようと必死だ。UBSの買収発表の直後には日米欧の6中央銀行が市場へのドル供給強化を表明し、ドル調達懸念の払拭にも動いている。
騒動の大本にあるSVBの経営破綻――。それは銀行関係者にとって、「まさか」が現実になった驚きの事案だった。
次ページでは、そのまさかをひも解くとともに、SVB破綻が銀行業界にもたらした“教訓”、そして日本の地方銀行がこの破綻により予期せず抱えることになった“時限爆弾”について明かす。邦銀にとっても、金融不安は対岸の火事ではない。