私が事業戦略の仕事をしていた頃、決算や新サービスのリリースのたびに、経営陣が端末で自社の株価を見にきていました。
株価はその会社の将来への期待の表れですから、株主が将来に前向きな展望を持ってくれれば株価は上がるはずです。なのに、決算や新サービスを発表しても、株価が横ばい、逆に下がってしまうこともありました。そんなとき、フロア全体がなんとなく重苦しい雰囲気になったのを覚えています。
市場は必ずしもこちらの期待通りに反応してくれません。なぜでしょうか?
投資家側には、次のような傾向があるように思います。
・既存事業しか見ていない。
・「この会社はこの領域の会社だ」という思い込みが強い。
個人の自己PRでも、企業のIR活動でも、大事なことは同じです。
「伝わらなければNo Value」というマインドを持ち続けることです。こちらが「言った」ことに価値があるのではなく、相手が「理解できた」ときに初めて価値になります。
うまい会社は、「一撃で伝わる表現」を持っています。
私が最近感動したのは、ある精密部品メーカーが会社説明資料に掲げていた、「こっそりをごっそり」というコピーです。
一般には知られていなくても(こっそり)、実は世界中のあらゆる製品に使われている(ごっそり)――短い言葉で、自社の特徴とスケール感を見事に伝えていました。
このように受け手の印象に残る表現を工夫するだけで、IRの効果は大きく変わります。
会社が見せ方を工夫するのと同じように、私たち個人も、「相手にどう見えているか」を意識して自己紹介文やプロフィールを整えることが大切です。
売り込みが上手な人は
相手目線で動いている
それでも市場が反応してくれない場合、企業は「自社株買い」という手段をとることがあります。
「自社にはもっと価値があるはずなのに反応しないのですね。じゃあ、自分で証明しましょう。自社のことを誰よりもわかっている我々が、自社の株は割安だと思っているんだから買うんです。さあ、みんなついておいでよ」というメッセージを、“行動”によって示すのです。
『世の中のことも自分のこともみるみるわかる お金の「選択」人生の節目に役立つファイナンス超入門』(森 暁郎、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
これは「シグナリング効果」と呼ばれ、言葉よりも行動のほうが強い説得力を持つことを意味します。ビジネスの世界では、「信じてください」と言うより「自分でやります」と動いたほうが信頼を得やすいのです。
自分を上手に売り込むことが大事なのは、個人も企業も同じです。大事なのは、「相手が欲している情報は何か?」を察知して考慮したうえで、行動に移すことです。
たとえば、会食などの誘いを受けても、「ありがとうございます、予定を空けておきます」で終わる人がいます。
一方で、相手の情報を調べて、話題や服装を工夫して臨む人もいます。一概には言えませんが、結果を出すのはたいてい後者です。
頑張ったのなら認められたいのは、個人も企業も一緒です。
IR活動は、会社が社会から認めてもらうための重要な営みです。IR部門や広報部門から情報収集や取材の依頼が来たら、ぜひ積極的に協力しましょう。IR活動は、あなたの会社がモテるかモテないかの生命線なのです。







