オフィスで頭をかかえる男性写真はイメージです Photo:PIXTA

働き方改革のおかげで、労働環境は確かによくなった。そのいっぽうで、制度の網からこぼれ落ちた人がいる。管理職だ。部下の残業を減らせと言われ、その分の穴埋めの仕事を行い、マネジメントも請け負う…。過労死しても決しておかしくない、管理職の現状とは?※本稿は、労働政策研究・研修機構労働政策研究所長の濱口桂一郎『管理職の戦後史 栄光と受難の80年』(朝日新聞出版)の一部を抜粋・編集したものです。

働き方改革の労働時間の規制は
多くのホワイトカラーを救った

 2018年4月から6月にかけて、衆参両院で働き方改革関連法案が審議されたとき、国会議員たちの質疑はほとんどもっぱら高度プロフェッショナル制度(編集部注/高度の専門的知識等を有する年収1075万円以上の労働者を対象に、労働時間・休憩・休日・深夜割増賃金に関する規定を適用除外する制度)の是非に集中し、圧倒的に多くの労働者に影響を及ぼす時間外・休日労働の上限規制の導入は二の次三の次であるかのような様相を呈しました。

 しかしこの改正は、日本の労働時間法制の歴史上、成人男子の時間外・休日労働に初めて明確な上限規制を導入したという意味で、極めて重要なものです。なおかつ、私にとっても長年主張してきたことが部分的にではあれ実現したという意味で、感慨深いものがありました。

 名ばかり管理職やホワイトカラーエグゼンプション(編集部注/賃金を労働時間ではなく成果で決める制度)の議論が沸騰していた2000年代半ば、私は「残業代ゼロ法案」を批判するばかりであった当時のマスコミの論調に対し、ある範囲のホワイトカラー労働者に対して労働時間と賃金とのリンクを外す制度自体は合理的であり、むしろ管理職でも裁量制でもないごく普通の一般ホワイトカラー労働者が、法律上時間外・休日労働の制限もなく、会社から与えられた膨大な仕事をこなすために無限定の長時間労働を強いられていることこそが問題であると主張していました。