
「失われた30年」で日本の上場企業の時価総額はアメリカの10分の1以下にまで衰退した。賃金も世界に大きく後れを取る今日の日本経済の惨状を招いたのは、日本の大企業やその経営者だ。ネスレ日本でキットカットの受験キャンペーンの大成功などの成果をあげ、10年にわたってCEOを務めた高岡浩三氏が、最新決算を踏まえて日本の大手企業を本音で評価した『企業の通信簿』。今回は、同書から一部抜粋し、世界から取り残された日本経済や日本の経営者の深刻な現状に迫る。
日本にもはや経済大国の実力はない
せいぜいファミリーカーレベル
若い世代の方々にはそんな寝ぼけた人は少ないと思いますが、腐っても鯛、いまだ日本は世界の経済大国の一角に入っているはずだと妄想している人は、目を覚ましてください。日本にはもはやその実力はありません。自動車にたとえれば、日本経済はダンプカーでもスポーツカーでもなく、せいぜいファミリーカーのレベルです。
日本の経済的繁栄は1990年代初頭まで続きましたが、ご存じのとおり、バブル経済の崩壊後は低迷から抜け出せず、GDP(国内総生産)は2010年には新興国の中国に追い越され、2023年にはドイツに抜かれて世界4位に後退しました。早晩、急成長するインドにも抜かれると予想されています。
中国、ドイツの後塵を拝したとはいえ世界4位はそれほど悲観する順位でもないやん、と思うならおめでた過ぎます。GDPは経済の規模を表す指標ですから、産業の高度化の度合い=生産性の高さに加え、人口に大きな影響を受けるからです。
高齢化しているとはいえ、日本の人口は約1億2300万人で世界12位です。OECD加盟国では、アメリカ、メキシコに次ぎ3位です。ですから、日本のGDPが全体としては上位にあるのも、アメリカや人口大国の中国の下にあるのも当たり前なのです。悲観すべきは、日本より人口の少ないドイツに抜かれてしまったことです。ドイツの人口は約8500万人で日本の70%の規模です。