私がNASA(米航空宇宙局)で働いている時に聞いた言葉ですが、「早く行きたければひとりで行け、遠くに行きたければ仲間と行け」というのがあります。自分のペースで、自分の行きたいように動けば、確かに初動は早いでしょうが、困難な状況に陥った時は、ともに助け合える仲間がいるからこそがんばれる、解決策が浮かんでくるものなのです。宇宙飛行も、会社員生活も、チームワークが成功のカギを握っているといえるでしょう。

 そして、「チャレンジする勇気」を持ってください。宇宙開発の歴史は、常に試行錯誤の連続でした。数々の失敗から学び、改善を重ねることで、今日の宇宙開発の発展があります。皆さんも新しい挑戦では失敗することもあるでしょう。しかし、失敗は成長の機会です。大切なのは、失敗から何を学び、次にどう活かすかということです。

 私が最後に搭乗した宇宙船はスペースX社の「クルードラゴン」号でしたが、同社の現場でよく語られていたのが“Fail fast, fail smart(早いうちに失敗しろ、賢く失敗しろ)”でした。

 つまり、失敗を恐れて慎重に進めていては大きな飛躍の機会を逃すことになる。むしろ積極的にチャレンジして早い段階で失敗し、そこから賢く学んで素早く立ち直り、新たな挑戦につなげていく方がよい、という意味です。

新たな時代を切り拓けるのは
何者でもない若者たちの特権

 技術開発もビジネスも100%安全な選択肢はありません。リスクを取ってチャレンジし、時には失敗してもめげずに立ち上がり、やがてイノベーションを起こすことが求められると思います。

 若い人たちと話していると、「自分には実績も能力もない」と悩む人がいますが、それはある意味で若者の特権です。大人になると過去の実績や経験の延長線上でしか未来を見ることができなくなります。はるか先に描く理想像から遡って現在を捉え、何が足りていないかを考えることができる。それこそが時代を切り拓く原動力になるのです。

 何も持っていない自由である立場を活かして、固定観念にとらわれない、未来世代の新たな視点に期待しています。

 宇宙から地球を見ると、その美しさとまばゆいばかりの明るさに圧倒されます。同時に、単なる風景ではなく、地球のダイナミズムもしっかりと感じ取ることができます。美しく青いこの星は、間違いなく生きているのです。そして私たちは皆、一つだけの美しい地球に一緒に住む仲間だと実感します。皆さんの仕事も、きっと誰かの役に立ち、社会をより良くするものです。

 そして、皆さんが住んでいるこの地球の輝きを絶やさないために、持続可能な社会作りの一助になっているはずだと信じています。無限の可能性を秘めた皆さんの未来に、心からエールを送り、私からの贈る言葉とします。