学校ではタブレット学習が当たり前になり、日常では動画コンテンツやゲームに囲まれる中、「ノートがきちんと書けない」「自分の考えや出来事を言葉で伝えられない」子どもたちが急増しているという。この「アウトプット力」の欠如は、単なるコミュニケーションの問題にとどまらず、子どもの思考力や成績に深刻な影を落としている。今回は、中学受験専門のプロ家庭教師であり『中学受験必勝ノート術』の著者・安浪京子先生と、言語化の専門家で『こども言語化大全』の著者・山口拓朗先生の対談から、現代の子どもたちが抱えるアウトプット環境のリアルと、家庭でできる解決策を探る。(構成 森本裕美)

【安浪京子×山口拓朗対談 01】「もはやノート崩壊」‥‥‥。書けない子が急増する時代に親がやるべき唯一の対策『こども言語化大全』の著者・山口拓朗氏(左)と『中学受験必勝ノート術』の著者・安浪京子氏(右)

大人も子どもも「言葉にできない」現代のリアル

山口拓朗(以下、山口): 私は企業研修などで大人と接することが多いのですが、「新入社員の言語化力をなんとかしてほしい」という悩みが非常に増えています。何を考えているのかわからない、質問しても最低限のことしか答えられない、そもそも質問が出てこないといった状況です。

安浪京子(以下、安浪): そうなんですね。

山口: 今の新卒の方々は、コロナ禍が高校生とかなので。そういう影響もあるでしょうし、あとはスマホですね。直接話す機会が減っているという。会社で電話を取り次ぐことも減っていますし、コンビニもセルフレジですからね。

安浪: たしかに。外食に行っても配膳ロボットが増えましたしね。それに、遊びの質も変わりましたよね。昔は友達と集まって遊ぶときに、下の兄弟を連れてきた子がいると、下の子にも分かるようにルールを説明するということがありましたけど、今はそういう機会がほとんどないですよね。

山口: ないですよね。結局遊びの中でいろんなことを伝えたりとか、論理的に考えたりとかするじゃないですか。それがきっと言語化の自然な訓練になっていたと思うんですけど、今はないですよね。

「もはやノートではない」。書く力の深刻な低下

山口: 安浪先生は、国語ではなく算数の指導がご専門ですが、子どもたちのアウトプット力という観点で、現状はいかがですか?

安浪: 「どえらいことになっている」と感じています。特に深刻なのがノートですね。6年生の算数のノートを見ても、もはやノートとは呼べない状態です。マス目を無視してぐちゃぐちゃに書き殴って、計算ミスをしている子がたくさんいます。

山口: 書く力が落ちている原因は何だと思われますか?

安浪: 大きな原因は、教育現場でタブレットが普及して、物理的に書く機会が減っていることだと思います。タブレットの画面ってツルツルしてるじゃないですか。そうすると摩擦がないから、思ったところで鉛筆を止める経験ができないんですよ。その結果、字が極端に薄い子や、トメ・ハネ・ハライが全くできない、ふにゃふにゃの文字を書く子が増えています。

山口: 書く機会が減ると、学習能力全般が落ちそうですよね。

安浪: はい、本当に落ちます。ノートに「書く」ということは、頭の中の思考を「具体化」するっていうことなんですよね。だから、ノートが書けないということは、頭の中でモヤモヤしているだけ。つまり、自分が「何が分かっていて、何が分からないのか」すら理解できていないということです。思考はアウトプットを通して深まっていきますから。

山口: そうですよね。それに「書く」って、やっぱり身体的な行為じゃないですか。頭と体が連動しているわけなので、記憶にもやっぱり強く残るし、長期記憶に行きやすいですよね。タブレットでクリックするだけだと、そういう身体性が抜け落ちているため忘却しやすいというか。

安浪: そう思います。