加藤 今はある意味、50年前の電卓、30年前のキーボードが登場したときと近い世界だと思うんですよ。

 30年前って、キーボードに触ったことある人とない人が混在していて、ブラインドタッチできると「すげー」みたいな時代でした。まあ、みんなできるようになっていったわけですけど。ただ、使い始めの頃に変な癖のあるタッチを覚えちゃって、その我流から抜け出せないみたいな人もいっぱいいました。

 だからAIも、最初の使い方って超大事だと思うんです。それが何かと聞かれたら、なんて答えますか?

石井 パソコンが登場したことで、多くの人は漢字が書けなくなりましたよね。それまで長らく漢字を書いてきた世代の僕らはあまり忘れなかったけど、若い世代は本当に漢字を書けない人が多い。

 それを考えると、入社すぐに「シンキング」の一部を代替するようにAIを使うと、漢字が書けなくなるのと近いようなことが起こると思うんですよね。つまり、仕事における思考力が下がる。

 その意味では、AIなしでやる期間も大事なんでしょうね。

AIを使いこなすために新入社員が「やっておくべきこと」

石井 ただ一方で、非効率な方法を学んでしまって、それが当たり前になってもいけないなとも思うんです。

 DXがうまくいかないのは既存プロセスを変えないからだってよく言われますが、それと同じように、既存の仕事に合わせてAIを使っても、たいした力を発揮できないと思います。

 もし社員の半分とか全員がAIネイティブになれば、もう覚えてなくていい、やらなくていい仕事もたくさんあるでしょうしね。電卓あるなら暗算できなくたっていいじゃん、みたいに。

――既存のプロセスを前提にしないという点においては、「こんな作業、AIでやればいいのに」という気づきは、まだ既存に染まりきっていない若手社員の方があるような気もしました。

加藤 ただ、「こんな作業は置き換えればいいじゃん」って言えるには、その作業が何かを知らないといけないですよね。

 そう考えると、自分がやったことのない業務をいきなりAIでやってしまっていいのかという議論はありそうです。仕事に対する倫理や矜持みたいな話も絡んできそうですけど。