将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な習慣によって、そのリスクを高めてしまうことがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その事実を紹介したのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏の著書『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』だ。認知機能を崩壊させる「黒幕」の正体や、そのメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介した同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

認知症の予防で「健康食品」を買っている人が知ったら“がっかりする事実”とは?Photo: Adobe Stock

認知症予防の「健康食品」に頼る人の落とし穴

「脳の活性化に!」
「記憶力アップの奇跡の食材!」

 そんな魅力的なキャッチフレーズを見て、健康食品を購入した経験はないだろうか。

 ココナッツオイル、MCTオイル、ベリー類、ポリフェノール……。認知症予防によいと紹介される食品は、次々と登場する。

 とくに、将来の認知症に不安を感じている人ほど、こうした情報に敏感になる。

「少し高くても、健康のためなら」

 そう考えて、健康食品を取り入れている人も少なくないだろう。

 しかし、こうした「健康食品への過度な期待」に対して、元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は著書『糖毒脳』で、冷静な見方が必要だと指摘している。

いかなる食品であれ、特定の食品を摂取するだけでアルツハイマー病を劇的に予防できる、あるいは発症した認知症が奇跡的に回復するというような科学的根拠は、現時点では残念ながら確認されていません。
多くの研究は、特定の成分の効果を動物実験や細胞レベルで検討したものが多く、それがそのまま人間の認知症予防に直結するとは限りません。

――『糖毒脳』より引用

 健康効果がある可能性は、もちろん否定されていない。

 しかし、それが「認知症予防の決定打」になるかというと、話は別なのだ。

「これを飲めば大丈夫」という発想の危険性

 つまり「これを食べれば安心」という食品は、現時点では存在しないということだ。

 それにもかかわらず、私たちはつい「特効薬」のようなものを求めてしまう。手軽で、すぐに効果が出そうなものに惹かれるからだ。

 その心理こそが、注意すべき落とし穴でもある。さらに下村氏は、国の機関の見解についても紹介している。

米国の国立衛生研究所(NIH)が発表している情報や、厚生労働省の「統合医療」情報発信サイトでも、特定の栄養補助食品やハーブなどが認知症や認知機能低下の予防に決定的な効果を持つという直接的なエビデンスはないと明記されています。

オメガ3脂肪酸についても、魚の摂取量が多いこととの関連は示唆されるものの、サプリメント形態での単独摂取によるアルツハイマー病治療への明確な有用性は証明されていません。
――『糖毒脳』より引用

 健康食品そのものが悪いわけではない。しかし、「これを飲めば大丈夫」という考え方には注意が必要だ。

 食生活は、日々の積み重ねでつくられる。特定の食品を追加するだけでは、生活全体の影響を打ち消すことはできない。

 認知症のリスクは、特別な食品ではなく、日常の習慣によって左右される。

 健康食品に期待する前に、まず日々の食習慣を見直す。

 そのほうが、認知症予防としては、はるかに確実な一歩なのかもしれない。

(本稿は、『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。