将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な習慣によって、そのリスクを高めてしまうことがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その事実を紹介したのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏の著書『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』だ。認知機能を崩壊させる「黒幕」の正体や、そのメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介した同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

【ただの物忘れ? それとも…】なるべく早く気づきたい「認知症になりかけている人」のサインPhoto: Adobe Stock

「認知症」と「アルツハイマー病」の違いって?

「認知症とアルツハイマー病って、何が違うの?」

 もしかしたら、混乱している人も多いかもしれない。

 テレビやニュースで耳にする機会は多いけれど、その正確な関係を理解している人は意外と少ない。

 元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は著書『糖毒脳』で、次のように説明している。

認知症とは、記憶や思考、行動に障害が出るなど、脳の様々な機能が障害された結果、日常生活を送ることが困難になった状態を指す「症状の総称」です。
――『糖毒脳』より引用

 つまり認知症は、特定の病気の名前ではなく、「状態」を指す言葉だ。

 そして、その原因となる病気の中で最も多いのがアルツハイマー病である。

認知症の症状を呈する患者さんの7割もの人が、アルツハイマー病を患っていると言われています。
――『糖毒脳』より引用

「認知症になりかけている人」の多くは、アルツハイマー病の初期段階にある可能性があるということだ。

すべては「小さな異変」から始まる

 アルツハイマー病は、ある日突然、劇的に始まるわけではない。

 むしろ、日常の小さな変化として現れる。

 では、そのサインはどこに現れるのだろうか。下村氏は同書の中で、こう述べている。

アルツハイマー病は、最初は「あれ? 昨日何食べたっけ?」「さっき言われたことなのに思い出せない……」と、ごく最近の出来事を思い出すのが難しくなったり、慣れた道でも迷子になってしまったりする症状から現れます。
――『糖毒脳』より引用

 ここで重要なのは、「最近の出来事」が思い出せなくなるという点だ。

 昔のことは覚えている。

 しかし、昨日のことや、さっきの話が思い出せない。

 この変化は、単なる加齢による物忘れとは異なるサインの可能性がある。

 さらに症状が進むと、変化は記憶だけにとどまらない。

そして病状がさらに進行すると、だんだんと遠い昔の記憶までたどれなくなったり、適切な言葉が出てこなくなったりします。記憶の地図はますます曖昧になり、やがて道や建物の認識、時間の感覚、場所の認識、そしてついには愛する人の顔さえもわからなくなってしまう、という悲しい現実が待っています。
――『糖毒脳』より引用

 記憶に関係したこういった症状は「中核症状」と呼ばれている。

異変が小さいうちに、気づき、対処しよう

 そして、さらに病状が進むと、中核症状に加えて、まるで性格が変わってしまったかのように見える「行動・心理症状」(専門的には「随伴症状」とも呼ばれる)が出現する。

 家中を徘徊したり、暴言を吐いたり、あるいは家族に対して根拠のない被害妄想を抱くようになる、といった行動がこれに相当する。

 そのため行動・心理症状は、患者本人だけでなく、介護する家族にとっても大きな負担となることが少なくない。

 だからこそ、小さな異変に早く気づき、適切な対応を始めることが重要だ。それが、病気の進行を遅らせることにもつながる。

 そのためにも、中核症状といった認知症のサインを、自分自身や家族の身に起こりうる変化として理解しておくことが非常に重要なのである。

(本稿は、『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。