相鉄グループ、パナソニック、中川政七商店、黒木本店、尾鈴山蒸留所、久原本家 茅乃舎、そしてくまモン……
様々なブランドを大ヒットに導いてきたクリエイティブディレクター・水野学氏。
さぞや忙しいのでは、と思われがちだが、実は毎日8時間睡眠のゆったりした生活を送っているという。
それは独自の時間の使い方があるからだ。
いったいどうしたら、多くの仕事を抱えながら、焦らず、慌てず、余裕のある生活ができるのか?
水野学氏の著書『逆算時間術』(ダイヤモンド社)から探ってみたい。

「ベテランになれば誰でも仕事は早くなる」は嘘? 10年経っても時間に追われる人と、爆速で終わらせる人を分ける“たった一つの習慣”とは?Photo: Adobe Stock

一つひとつの仕事の時間を計っていく

 会社員時代、スケジュールに猛烈に気を配り、1日に何度も予定を組み直していました。その仕事が、どのくらいの時間がかかるのか、見込みを立てながら、大きな負荷を自分に与えないよう、調整していたのでした。これは、自分自身を守るためでもありました。

 となれば、この「どのくらいの時間がかかるのかの見込み」が極めて重要になります。そこで僕がやっていたのが、時間を計ることでした。

 昔は台紙にパーツを貼ってデザインを組んでいったのですが、まっさらな台紙を前にして、時計を目の前に置いていました。そして「用意スタート!」でデザインを始める。

 仕事によって、かかる時間はまちまちなのは当然ですが、これをやると「こういう仕事は、このくらいの時間がかかるな」ということが、おぼろげに見えてくるのです。同じような仕事を5回もやれば、だいたいわかってくる。

 より大きなスペースのデザインになり、台紙が大きく複雑なものになると、時間は変わってきます。それもちゃんと計っておく。だんだんと、「複雑なものになっても、このくらいの時間でできるんだな」ということが見えてくる。

 やがてMacで作業するようになってからも、同じように時間を計り続けました。ツールは変わっても、作業にかかる時間を把握する重要性は変わりません。

 時間を計ったのは、デザインだけではありませんでした。見積もりをつくるには、どのくらいの時間がかかるのか。それを見積書にしてファックスで送るとなれば、どのくらいの時間が必要か。

 こんなふうに、自分の作業に何分かかるのか、をどんどん把握していった。だから、スケジュールを比較的、正確に読み、組むことができたのです。

 時間に対してかなり意識的になっていたのは、自分を不快にすることから逃れるため、でした。それは先輩方からのこんな一言でした。

「あれ、まだやってないの?」
「なんでやってないの?」

 僕はこの言葉が好きではありませんでした。デザインについて何か指摘を受けたりしても、それほどは気にならなかった。ところが、「早くしろ」と言われるのが嫌だったのです。

 これは時間に厳しかった親から、「まだやってないの」と厳しく問われて育ったことも大きいと思います(笑)。だから、そう言われる前に早くやりたかった。実際、仕事は早かったと思います。

 というのも、時間を計っていると短縮したくなるのです。ゲーム感覚で取り組むうちに、かかる時間がどんどん短くなっていった。そうすると、多くの仕事ができるようになった。これは誰にでもできることだとも思っていました。それなりに長く現場で働けば、誰でも時間短縮が上手くなるのだと思っていました。ところが、そうではないことに次第に気づいていきました。

※本稿は、『逆算時間術』水野学(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して掲載したものです。