相鉄グループ、パナソニック、中川政七商店、黒木本店、尾鈴山蒸留所、久原本家 茅乃舎、そしてくまモン……様々な案件で大ヒットを生み出してきたクリエイティブディレクター・水野学氏。さぞや忙しいのでは、と思われがちだが、実は毎日8時間睡眠のゆったりした生活を送っているという。
それは独自の時間の使い方があるからだ。いったいどうしたら、焦らず、慌てず、余裕のある生活ができるのか? 水野学氏の著書『逆算時間術』(ダイヤモンド社)から探ってみたい。

「それも捨てちゃうの?」と妻が仰天。思い出の品でも迷わずゴミ箱へ放り込める「たった一つの指標」とは?Photo: Adobe Stock

判断基準を決めると、迷わずに済む

 日々生活をしていたり、仕事をしていたりすれば、問答無用にやらなければいけないことも出てきます。脳を最高の状態に保ちたいけれど、時間が奪われていくことは避けられない。では、どうするのか? 奪われていく時間をいかに短くするか、です。

 あるとき、僕の実家の整理をすることになりました。両親が介護施設に入ることになり、いずれやらなければいけない片付けを、少しでもやっておくことにしたのです。このときの僕について、妻がずいぶん驚いていました。

「わあ、この感じ懐かしい、こんな可愛い時代があったんだね」なんて言いながら幼稚園時代の連絡帳を眺めている妻を尻目に、僕はいろんなものを猛烈なスピードでゴミ袋に放り込んでいったからです。

 普通は思い出の品物が出てきたりすると、「これは捨てられないなぁ」なんてなるものだと思います。もちろん僕も、両親はこんなものまでとっておいてくれたのか、とぐっとくる瞬間はたくさんありました。感謝も、切なさも、こみあげてくる。でも、うちの子どもは息子一人。今ここで処分しておかなければ、いずれ全部、息子にのしかかってきます。

 僕がバサバサと処分するのを見て、「え、これも捨てていいの?」と妻はかなりドキドキしていたようです。でも僕には、明確な判断指標と優先順位がありました。

 それは、僕の妻や息子にとって必要か、です。例えば、両親が幼い頃の僕と一緒に写っている写真アルバム。これは息子には大切なものになるでしょう。自分を可愛がってくれた、おじいちゃん、おばあちゃんの若い頃の写真があるのです。

 一方で、両親がとっておいた僕についての物はどうか。小学校のときに描いた絵とか、高校時代の学ランとか、それは両親にとって大切だったものかもしれないけれど、もしとっておいたら、いずれ息子が困ることになるわけです。息子に迷惑をかけたくない。だから処分する。判断基準が決まっていたので、迷わずに済みました。

 会社でもたくさん制作物をつくっていますから、ストックが溜まっていきます。これは年1回の大掃除で「残すか、処分するか」を判断することにしています。

 残さないものはスタッフに分配することが多いのですが、「え~、この記念のTシャツ、本当にもらっていいんですか!?」なんて言われたりもします。でも、僕の決断は早いです。判断指標は「来年も必要になるか」。ここは腹を決めて、ドライに判断します。

 これはランチのメニューを決めるときと似ています。おそらく、来年1年間、そのTシャツを取り出すことはないのです。とすれば、残しておく必要はない。「物事を小さく見る」ことで判断が早くなるし、結果的に、翌年にまた同じことで迷わなくて済みます。

 判断基準と優先順位を決めると、迷う時間そのものがなくなっていく。それだけで、未来の自分がずいぶんラクになるのです。

※本稿は、『逆算時間術』水野学(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して掲載したものです。