相鉄グループ、パナソニック、中川政七商店、黒木本店、尾鈴山蒸留所、久原本家 茅乃舎、そしてくまモン……様々な案件で大ヒットを生み出してきたクリエイティブディレクター・水野学氏。さぞや忙しいのでは、と思われがちだが、実は毎日8時間睡眠のゆったりした生活を送っているという。
それは独自の時間の使い方があるからだ。いったいどうしたら、焦らず、慌てず、余裕のある生活ができるのか? 水野学氏の著書『逆算時間術』(ダイヤモンド社)から探ってみたい。
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絶対に見失っていけないのは、仕事の「目的」
僕はクリエイティブディレクターであり、デザイナーでもあるわけですが、かっこいいクリエイティブをつくったり美しいデザインをしたりすることが、仕事の目的ではありません。それは当然クリアすべきことであって、そこを目指しているわけではない。
僕の仕事の目的は、クライアントの願いを叶えることです。
クライアントのブランドイメージが上がることであり、クライアントの商品が売れることであり、クライアントの売上が伸びることであり、クライアントのファンが増えることです。
もし、自分の作品のようなものをつくりたいなら、それはそれで尊い創作活動です。ただし、純粋につくりたいものをつくることが目的なら、誰かに見せる必要も、売る必要もありません。
しかし、僕たちの仕事は違います。クライアントワークである以上、買ってくださる方、使ってくださる方の気持ちを徹底的に考える必要があります。
僕たちの仕事は買ってくださる方たちがいて成立している。僕はそこをあえて強調するようにしています。これは、美大時代、作家性を重視する考え方に囲まれていたことも大きいのかもしれません。その対比を経験できたのは、むしろ、幸運だったと思います。
もし、僕が自分の表現だけを追求したいのであれば、山の中で焼き物をしていると思います。実は絵を描くこと以上に、焼き物が好きなので、ひたすら焼き物を焼いて、「できた」と喜んで、自分の中だけで完結していたと思います。
でも、僕はそうしていない。この道を選んだのは、自分のつくりたいものをつくるよりも、誰かの役に立つものをつくることに、より大きな意味を感じるからです。クライアントのため、多くの人々のために役立つものを生み出し、それによって世の中が少しでもよくなること。それが、社会の一員として仕事することの面白さだと思っているのです。
だからこそ、クライアントにもとことんうかがいます。商品を売って何をしたいですか。サービスを提供して、どうしたいですか。ブランド価値を上げることで、世の中にどんなプラスが生まれますか……。
こういうことを徹底的に聞き、確認することによって、見えてくる世界があります。クライアントが企業として目指すゴールです。その解像度を、どんどん上げていく。そこから逆算して考えていく。
ゴールからの逆算思考です。目的に到達するまでの道のりの解像度を、お互いにどんどん高めていく。
そうすると、話はとても早くなります。時間をかけずに、どんどん物事が決まるようになります。「これで行こう」という方向が見えているから。
最初からすんなりこうなるとは限りません。でも、目的を間違えなければ、確実に近づいていきます。そして、仕事はどんどんスピードアップしていくのです。
※本稿は、『逆算時間術』水野学(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して掲載したものです。







