相鉄グループ、パナソニック、中川政七商店、黒木本店、尾鈴山蒸留所、久原本家 茅乃舎、そしてくまモン……様々な案件で大ヒットを生み出してきたクリエイティブディレクター・水野学氏。さぞや忙しいのでは、と思われがちだが、実は毎日8時間睡眠のゆったりした生活を送っているという。
それは独自の時間の使い方があるからだ。いったいどうしたら、焦らず、慌てず、余裕のある生活ができるのか? 水野学氏の著書『逆算時間術』(ダイヤモンド社)から探ってみたい。

「今日中にお願い」と無茶振りをされたとき、仕事ができる人はなんと返す?Photo: Adobe Stock

時間は、小さな「交渉」でつくれる

 自分で時間をコントロールすると言っても、できることとできないことがあります。
 ただ、どんな立場でも、どんな状況でも、できる範囲の中で自分で時間を決めている人と、決めていない人がいると思います。大事なのは、時間をコントロールしようという意識そのものです。

 僕にも会社員時代があったわけですが、もしかすると当時の働き方は、新人の割には変わっていたかもしれません。まだ長時間労働が当たり前の時代で、多くの仕事を抱え、朝9時から深夜遅くまで働くことも珍しくありませんでしたが、それでも、自分で時間をコントロールしようとしていました。

 実際、1日のうちで1時間半から3時間くらいをスケジュール調整の時間に費やしていました。どの時間にどの仕事をするか、きっちり予定を組んでいく。上司が出社したら、きっとあれを頼まれるな、ということを見越して空白の時間も用意しておく。

 1日のスケジュールに加え、週間と月間でもスケジュールと睨めっこしながら、どんなふうに仕事を進めていくか、考えていました。

 とはいえ、一番下っ端ですから、上司や先輩の進捗に応じて、予定はどんどん崩れていきます。仕事が早く終われば、暇そうだねと別の仕事が入ってきたりする。

 1日の中でも、いろいろなことが起こります。だから、日に何度もスケジュールを調整し直していました。

 また、先の見えない待ち時間のような無駄を、できるだけつくらないように工夫する。邪魔されず集中できる時間を確保する。こうしたことを積み重ねていました。この繰り返しが、時間を微調整する力や、厳しい状況でもリカバーできる力につながっていったと思います。

 その頃身につけたコツが、時間の「交渉」をする、ということでした。

 例えば、上司から明日の午前中までにこれをやっておいてくれ、と言われたとします。しかし、すでに抱えている仕事があり、自分のスケジュールを見ると、これは苦しい。

 となれば、言われたままにするのではなく、「交渉」するのです。午前中ではなく、午後2時までにしていただけませんか、と相談してみる。それだけで、時間はただ与えられたものではなく、自分のものになります。

 周囲には、そんなことをしていいのか、と驚く同僚もいました。でも、できる範囲で相談してみると、案外、時間をもらえることの方が多かったのです。

 余裕を持って仕事に取り組めるから、焦ることもなくなる。「ワーッと」ならずに済む。時間のコントロールは、そういう小さな交渉からも始められるのです。

※本稿は、『逆算時間術』水野学(ダイヤモンド社)から一部を抜粋・編集して掲載したものです。