防衛機制とは、受け入れがたい現実による心の葛藤を処理し、自分を守る心理システムです。自分の感情を相手のものだとすり替える「投影」もその一つ。人は防衛機制により、無意識に自分に嘘をつきがちです。現実に適切に対処するためにも、日頃から「本当の自分の気持ち」を問いかける習慣を持ちましょう。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局・斎藤順)
※本稿は『精神科医Tomyが教える 1秒で不安が吹き飛ぶ言葉』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。

【精神科医が教える】なぜ人は「逃避」する? 心をむしばむ“無意識のウソ”の正体Photo: Adobe Stock

「防衛機制」とは何か?

今回は、「投影」についてお話しします。投影とは一体何かというと、「防衛機制(ぼうえいきせい)」と呼ばれるものの1つに分類されます。投影だけを切り取ってお話しするよりも全体像から触れたほうが分かりやすいため、まずは防衛機制そのものについて解説します。

この防衛機制は、「夢判断」などの著作で知られる心理学者のジークムント・フロイトの精神分析から生まれた考え方です。医学的に厳密に証明されているというよりは、一つの概念や学説として捉えていただいた方が良いでしょう。

この考え方を知っておくと、いろいろなことが見えてきて納得できることも多いです。

心の葛藤を処理する「防衛機制」の仕組み

人間は生きていると、到底容認しがたい事態に陥ることがあります。これを心理学では「認知的不協和」と呼びます。この状態をそのまま受け入れると心の負担が重くなってしまうため、「どうしよう」と葛藤が生まれます。

この葛藤を解決し、受け入れがたい現実をなんとか心が処理しようと働くシステムが「防衛機制」です。具体的には、自分の心を加工し、気持ちを書き換えることによって、認知的不協和という事態に対応しようとします。

防衛機制の具体例(否認と逃避)

具体例を出したほうが分かりやすいので、喫煙者を例に挙げてみましょう。「タバコはやめたいし、体に悪い(発がん性がある、肌が悪くなる、周りの評判も悪いなど)のもわかっている。でも、私はタバコが好きだ」という喫煙者がいるとします。

こうした矛盾する2つの情報が同居した際に覚える不快感やストレス、が認知的不協和です。このギャップをどうにかしようとして防衛機制が働きます。よくあるのが、認めないこと(否認)です。たとえば「私の周りのヘビースモーカーは長生きしているから、タバコが体に悪いというのは嘘だ」と信じ込むことで、自分の葛藤を収めようとします。

他にも「逃避」というものがあります。明日大事な商談があって準備をしなければならないのに、なぜか今日大掃除をしたくなる。これは、大掃除をすることで「仕事の準備をしなければならない」という現実から逃げようとしている状態です。