レベルの高い防衛機制「昇華」

防衛機制には、レベルの低いものから高いものまであります。レベルの低い防衛機制(先ほどの「否認」など)を使い続けていると、いずれ現実を認めざるを得なくなった時にどうにもならなくなり、生きづらくなってしまいます。

一番レベルが高く、良いとされているのが「昇華(しょうか)」です。たとえば、ラグビーをやりたいけれど自分は小柄で細身だから難しいという悔しさをバネにして、違うスポーツのトレーニングに打ち込んだり、その思いを文学作品にしたりと、うまくいかない現実を別の良い形へと昇華させることです。

他責や自責も防衛機制の一つ

他人を攻撃する(他責)」ことも、「あいつのせいだ」と思い込むことで自分が傷つかずに済むため、防衛機制に当たります。

また、「自分を責める(自責)」ことも実は防衛機制です。本当は問題に向き合って新しい改善策を立てなければならないのに、自分を責めることで「やった気」になり、その場で落ち着いて終わらせてしまっているからです。

「投影」という防衛機制について

さて、話を「投影」に戻しましょう。これはあまり良くないタイプの防衛機制の一つです。投影とは、「自分が相手に対して抱いている気持ち」を、「他人が自分に対して抱いている気持ち」であると解釈し直すことです。

たとえば、どうしても気に食わないクラスメイトがいるとします。相手は何もしていないのに腹が立つ。「自分が相手を嫌っている」と自覚すると、自分が嫌な人間になった気がして認知的不協和が起こります。「自分は嫌な奴だと思いたくない」。そこで、「相手が自分のことを嫌っているんだ」と、自分の気持ちを相手のものとして投影してしまうのです。

これは恋愛でもよく起こります。自分が相手のことを好きだけれど、その恋心を認めるのが落ち着かないときに、「自分が好きなわけじゃない、相手が自分のことを好きなんだ」と思い込む。そうすれば、自分は一方的に好かれているだけの立場になり、落ち着かない状態を避けられます。

このように自分の気持ちを相手のものにすり替えてしまうのが「投影」です。

自分の本当の気持ちに気づくために

防衛機制の話を通して一番お伝えしたい大切なメッセージは、「人は自分の気持ちをそのまま受け止めているわけではない」ということです。自分では「これが自分の気持ちだ」と思っていても、防衛機制が働いて、自分自身に嘘をついていることはよくあります。その前提を認識しておいたほうが良いということです。

自分の気持ちを正直に認めて知っていたほうが、物事に対処しやすくなり、現実に向き合えます。だからこそ、「本当の自分の気持ちは何だろう?」と日頃から問いかけてみてください。元気があるときで構いませんので、そうした習慣をつけておくと、自分が抱える本当の問題を見つけやすくなります。