新しい職場でコテンパンにされる
転職者はこんな人

 先日、ある大手企業の情報システム部門に在籍する36歳の男性が転職相談に来られました。転職を希望する理由をおうかがいすると、「新卒以来、ずっと同じ会社にいるので新しい空気を吸ってみたい」とのこと。こういう気楽な志望動機の人、緊張感の欠けた人は明らかに転職をしないほうがよい人です。

 長年勤めている会社ではそれまでに培われた信用や社内人脈がありますから、周囲の人に何か頼んでも「○○さんの言うことなら」といってみんな動いてくれますし、意見も通りやすい。いわばこれまでの信用の蓄積に基づく「信用取引」が可能になるわけです。ところが転職先では基本的に信用も社内人脈もありませんから、信用取引ができなくなります。それまでに築いた信用の蓄積がゼロにリセットされるのです。

 しかも35歳で転職すれば当然、転職先ではプロフェッショナルとして扱われ、年齢やポジションが下の人から見れば組織の序列の中に知らない人が割り込んできた形になります。したがって転職した当初は周囲から「まずはお手並み拝見」という視線で見られます。その意味ではゼロからのスタートというより、マイナスからのスタートと言った方が正しいと思います。

 信用取引ができず、周囲は「お手並み拝見」という冷めた態度のなかで成果を出すには多大なエネルギーが必要です。そんな状況から仕事をスタートし、しっかり力を発揮できなければ総スカンをくらう。そうしたプレッシャーのなかできちんと成果を挙げた人だけが周囲の信用を獲得し、新しい会社でやっていく素地ができていきます。

 それには並々ならぬ覚悟が必要で、安易に気楽な気持ちで転職したら新しい職場でコテンパンにやられ、あっという間に退職へ追い込まれるのは目に見えています。

「落ち着きたい」が
転職理由だとうまくいかないワケ

 30代の転職では希望理由として「落ち着きたい」を挙げる人もよくいらっしゃいます。その意味が「これまでにたくさん転職をしてきたけれど、もう軽はずみに転職しない」ということならよいのですが、「激しく働くのは嫌だ」という人は転職に向いていないタイプです。「転職してワーク・ライフ・バランスを実現したい」という人も、これと同じタイプに分類できます。