「ついヤバいと言ってしまう」「自分の考えをうまく言葉にできない…」。
言いたいことがないワケではないのに、うまく言葉にできない。あなたにも、そんな悩みはありませんか?
小学校から企業研修、さらには少年院まで、さまざまな現場で教えてきた小説家が教える、世界一やさしい「言語化」にまつわる授業。知ってしまえば、今は語彙力ゼロでも、話し下手でも、「自分の言葉」でちゃんと話せるようになれてしまう!
本記事では、子どもも読めて、大人も楽しいビジネス書『小学生でもできる言語化』から、著者の田丸雅智氏にヒントをうかがった。(構成/ダイヤモンド社・秋岡敬子)
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Q.少年院で印象に残っているエピソードはありますか?
――田丸さんはご自身の書き方講座を、小学校から高校、企業研修で行っているとお聞きしました。『小学生でもできる言語化』でもエピソードが登場したように、少年院でも行われているそうですが、何か少年院の子どもたちと接して印象に残っているエピソードはありますか?
文字を書いて起こった悲劇
田丸雅智氏(以下、田丸):とても印象に残っている出来事があります。
少年院の講座では、最初に「罪や違法行為、隠語に関わる言葉は書かない」というルールを伝えるようにしています。
実はこのルールは、少年院での活動をつづけるなかで後から加えたものです。
最初のほうは、一般向けの講座と同じく「何を書いても完全に自由」としていました。
きっかけになったのは、ある少年が薬物に関する隠語を作品の中に書いたことでした。
僕はそのとき、隠語だとは気づかなかったのですが、あとで施設の方から教えてもらいました。
ただ、隠語だったと聞いてすぐは、正直なところ「書くこと自体を否定したり制限したりするのはどうなのだろうか……」という迷いもあったんです。
でも、後日、施設の方から、その子がメンタルを崩して不安定になってしまったと聞きました。
本当の原因は分かりませんが、おそらく自分で隠語を書いたことは影響しているのではないか、と。
言葉は記憶と密接に結びついている
――なぜ、言葉を書いただけでそんなことが起きたのでしょうか?
田丸:専門家ではないので推測にはなってしまいますが、言葉が、その子の記憶と直結していたからではないかとは考えています。
薬物の隠語を書いたことで、それにまつわる過去の感覚や快楽の記憶が一気によみがえってしまった。
言葉そのものが、本人の中で強い刺激になってしまった形です。
その少年には本当に申し訳ないことをしてしまったと、かなり後悔しました。
そして、言葉の怖さを感じもしました。
言葉はただの記号ではなく、記憶や感情の引き金になる。
これは「少年院だから」という話ではなく、じつはこの例と同じようなことが、大なり小なり、よくも悪くも、日々自分にも起こっているということだと思いました。
言葉をどう使うかの大切さを強く実感した出来事でした。
誰でも当事者になり得る可能性がある
――お話を聞いていると、少年院の子どもたちは繊細な子が多いのかもしれませんね。
田丸:本当にそうです。
ただ、それは「特別に繊細」というより、「僕たちと同じ人間だから」ということなんだと思っています。
少年院と聞くと、つい「自分とは関係ない世界の話」「理解できない相手」と思ってしまいがちですが、まったくそんなことはありません。
少年院で出会う子どもたちも、基本的には普通の人です。素直で、繊細で、傷つきやすい。
環境やタイミングが違えば、誰でも当事者になり得るんだと感じます。
だからこそ、「自分とは無関係」と切り離さず、同じ社会を生きる一人として考えることが大切だと思っています。
僕がこの活動をつづけている理由のひとつでもありますね。
――『小学生でもできる言語化』では、単に言語化ができるようになればいい、という話ではなく、言葉と向き合って使うことについても詳しく書かれていますよね。このエピソードを聞いて、より自分が使う言葉には責任を持とうと思いました…!
(本記事は、田丸雅智著『小学生でもできる言語化』の著者インタビューです。)









