「連れる」には、「同行する。連れにする」という意味があり、「部下を連れて視察する」「犬を連れて散歩する」「仲間を連れて逃げる」のように使います。この場面で「連れる」を使うと、まるで連行でもされたかのような心証を来客に与えかねません。
「私がご案内申し上げます」
「どうぞこちらへ。ご案内いたします」
「最上様をご案内いたしました」
「最上様がお見えになりました」
このように自然な言い方であれば、自分が尊重されていると来客も感じるでしょう。また、場面が変われば、会場などで来客に同伴者がいる場合、「お連れ様(お連れの方)もこちらへどうぞ」と使うことはかまいません。
敬語では、正しい文法であること、場面に合っていることは基本です。加えて、初めの言葉選びを適切に行うことが肝心です。もともと不適切な言葉をいくら最上級の敬語に仕立てたところで、敬語はせっかくの役目を果たせません。もったいない話です。
「お取り寄せできない形になっております」
――それって一体、どんな形
「お取り寄せができない形になっております」
「後日あらためてご案内をさしあげる形になります」
こんなふうに「……できない形になっております」「形になります」と聞くと、思わず「それ、どんな形? 丸いの? 四角いの?」と言いたくなります。商品を取り寄せられないこと、何かをできないことを客に伝えるときなどによく使われている表現ですが、なぜこのような言い方なのか、不思議でなりません。
「形」とは、「形式やルール」という意味なのでしょう。仮にそうだとすれば、一つ目は「お取り寄せができない決まりになっている」という意味になります。言葉自体は丁寧ですが、客に対して有無を言わせぬ強さがあります。まるで言葉の防護服のよう。鎧(よろい)を脱(ぬ)ぎ捨てて、客に伝わる真摯(しんし)な表現にするにはどうすればよいでしょう。
その商品だけが取り寄せられないのか、お店として取り寄せを行っていないのかによって言い方が変わります。
「こちらは、お取り寄せが難しいお品です」
「あいにく私どもではお取り寄せを承っておりません」
「後日あらためてご案内をさしあげる形になります」も「後日あらためてご案内をさしあげます」で十分です。







