ビジネスの世界では「話し方」一つで大成功を手にすることもあれば、大損失を被ることもあります。ただし、口がうまいからと言って仕事ができるわけではなく、むしろ口下手の方が結果を出すケースも少なくありません。ビジネスで求められる実践的「話し方」とは?この特集ではあなたの「話し方」を劇的にアップデートする書籍を厳選しました。今回は『気のきいたモノの言い方ができる本』の中から、お詫びで失敗しない“大人の言葉づかい”をお届けします。(ダイヤモンド編集部編集長 山口圭介)

『気のきいたモノの言い方ができる本』Photo:PIXTA

ビジネスの現場でも重要な
ミスを認めての真摯な対応

「批判すれば取材先に出入り禁止になる」「これを書けば取材先から訴えられそう」――。ダイヤモンド編集部では、このようなハレーションがあったとしても、事実に基づき書くべきだと判断したネタについては忖度なしで報じる姿勢を貫いています。そのため、実際に訴訟に発展するケースも珍しくなく、編集長の業務の一定割合は訴訟対応というのが現実です(もちろん、しっかりと勝訴します)。

 当然それ以外にも編集長の業務はいろいろとあるのですが、意外と重要なのが訂正対応です。個人的な意見になりますが、メディアは自らの誤りを認めて記事の訂正を出すことを極端に嫌う傾向にあり、そうした姿勢が近年のメディア不信を増幅させているように思えてなりません。

 だからこそ、ダイヤモンド編集部では忖度のない報道姿勢に加えて、報道に誤りがあった場合は小さな案件であっても正直に、丁寧に対応する姿勢も強化しています。私が編集長になってからは特に徹底しており、訂正を出す回数は過去の編集長時代と比べて圧倒的に多いはずです(褒められたことではありませんが……)。

 ミスを認めて真摯に対応することは、ビジネスの現場でも重要です。しかし、素直に謝罪するつもりが、言い訳がましくなって、相手をさらに怒らせてしまった経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか。

「『申し訳ありません』と詫びるときの切り出しの言葉は大切です。自分の失敗や落ち度をしっかり反省し、言い訳がましくないきりっとした表現で始めたいものです」。こう指摘するのは『気のきいたモノの言い方ができる本』の著者である中川路亜紀氏です。

「・このたびの不祥事につきましては、

このあと、『誠に申し訳なく、お詫びの言葉もございません』などとつなげます。

・とりかえしのつかない事態を招いてしまい、
・思いもかけない結果を招いてしまい、
・たいへん失礼なことになってしまい、
・あってはならないミスを犯してしまい、

仕事が遅れた、混乱した、相手の手間を大幅に増やした、損失が出たなどの場合は『迷惑』と表現してもよいでしょう。その損失が甚大なものだったり、何かとりかえしのつかない自体を招いていたりする場合は、「ご迷惑」では軽すぎます。起こった事柄の内容に合わせた表現を選びます」(中川路氏)

また、中川路氏はお詫びの定番として「申し訳ありません」「申し訳ございません」を挙げています。

「『申し訳ありません』を強調する表現としては、

・誠に申し訳ございません。
・本当に申し訳ありません。
・たいへん申し訳ありませんでした。

これらと同格のお詫びの言葉としては、

・心よりお詫び申し上げます。
・衷心(ちゅうしん)よりお詫び申し上げます。
・平(ひら)にお詫び申し上げます。
・たいへん申し訳なく、心よりお詫び申し上げます。

『衷心より』とは、『心の底から』という意味です。『平に』は、平身低頭してお詫びする気持ちを表します」「なお、起こったことの経緯を説明する部分では、端的に、言い訳がましくならないように書きます」(中川路氏)

 反省の気持ちを強調するには、「恥じ入っております」「お詫びの言葉がございません」「お詫びのしようもございません」「深く反省しております」「猛省しております」など、いろいろな表現があります。その中で気をつけるべき表現として、「遺憾に存じます」を挙げる中川路氏。「遺憾に存じる」とは残念に思うことで、記者会見などでもよく聞く言葉ですが、自分の責任で起こった事柄に関して使うと、他人事のように言っていると反感を買うことがあるからです。

『気のきいたモノの言い方ができる本』の本文では、敬語の基本から大人の語彙力まで、ちょうどいい言い回しを300フレーズ収録しており、お詫びのみならず、お礼やお断りなど、あらゆるビジネスシーンに対応できます。「大人の言葉づかい」大全、ぜひご一読ください。

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『気のきいたモノの言い方ができる本』

気のきいたモノの言い方を身につけよう/目次/ウォーミングアップ 日常語を言い換える

第1章 顔を合わすとき、電話で話すとき

第2章 言いにくいとき、言葉につまるとき

第3章 仕事を進めるとき

第4章 そのまま使える!季節感を表現する言い回し/第5章 これだけはおさえたい!つかえる敬語一覧

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