その手際の良さは、まるで何度も繰り返してきたかのようでした。

 さらには後で分かった、もっと恐ろしい計画があったのです。

 美和さんはなんと、恵子さんの夫が残した遺言書を「美和さんは恵子さんと姉妹のように暮らしてほしい」という内容に書き換えようとしていたことが発覚しました。

 書き換えが完了した時点で、相続後だとしても恵子さんを意のままにコントロールして遺産を奪い取ろうとしていたようです。

 狙っていたのは遺産の2割です。

 2割でも数億円規模の土地と現預金です。2割という多過ぎない絶妙な割合を「自然な形」で引き出そうと画策していたのです。

ただ単に「お金が欲しかった」ではない
恐ろしい本質

 美和さんは40年以上前から恵子さんの性格や弱みを把握し、徐々にコントロールしやすい関係を築いてきたのです。

「ただ単にお金が欲しかった」のではなく、「恵子さんの人生を握る立場になりたかった」。それが美和さんの本質でした。

 私は、隠しカメラの決定的映像、位置情報アプリの利用履歴の不自然さ、遺品の撮影記録などを証拠として報告書にまとめました。

 恵子さんは美和さんの悪事の証拠を基に、弁護士を通じて裁判所へ申し立てを行いました。

 その結果、美和さんに恵子さんへの接近禁止命令が発令されました。

 命令を言い渡された美和さんは、次のような暴言を吐いたそうです。

「恵子なんて、私がいなければろくに一人で生きていけないくせに! 全部、私が面倒を見てやっていたのに! 私がいないとどっかの悪者にだまされるのがおちよ!」

 盗っ人たけだけしいにも程があります。

 弁護士経由でその言葉を聞いた恵子さんは、静かに「美和さんが、私のことを妹のように思っている、大事なの、心配なの、と言ってくれるたびに、孤独に押しつぶされそうだった心が温かくなりました。でもあれは全部、私の人生を握るための計算だったなんて。40年も一緒に笑ってきた人が、夫の死を待っていたなんて。人間って、本当に怖いですね」