この感覚は、近年「Quiet Luxury(静かなラグジュアリー)」という言葉でも語られるようになっています。派手さやわかりやすいブランドではなく、本質的・本物志向の体験に重きを置くという考え方です。

 超富裕層の方々はこれを、流行よりはるか以前からごく自然に体現されていました。

 私がお仕えしたある資産家の方は、ゴールデンウイークの予定を尋ねると、こう答えました。

「誰も知らないような小さな温泉宿に一週間いようと思ってね。電話も繋がりにくいところがいい」

 その宿は観光雑誌にも載っておらず、グルメサイトで評価されているわけでもありません。しかしご主人が代々の常連客のために守り続ける、静かで品格のある場所でした。

 別の方は、毎年お盆に山荘に篭もる習慣をお持ちでした。彼が求めていたのは豪華さではなく、「誰にも会わずに本を読み、考え事ができる時間」だったのです。

「この時期に有名なリゾートへ行っても、知り合いに会うか、見知らぬ観光客に囲まれるかのどちらかだ。それは休暇ではなく、仕事の延長に過ぎない」

 この言葉は、超富裕層の休暇哲学の本質を突いていると思います。

誰にでもできる
超富裕層の「休暇設計の原則」

 超富裕層の休暇設計の原則は、「どこへ行くか」ではなく「どんな状態で戻るか」です。

 誰もが山荘を持てるわけではありません。しかし、発想の転換は誰にでもできます。

 繁忙期を少しずらすだけで、移動は楽になり、費用は下がり、静寂が生まれます。

 本当の休息とは、非日常的な場所で買うものではなく、時間の使い方で作るもの――超富裕層の方々は、それをよくご存じなのです。