「悪気はなかった」――その一言で片づけられる“加害”がある。本人は気づかないまま、相手を傷つけ続けている。そんなすれ違いが、取り返しのつかない別れにつながることがある。日韓累計45万部を突破したベストセラー『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』(キム・ダスル著、岡崎暢子訳)の発売を記念した本記事では、今一番読みたいエッセイを書くライターの柴田賢三氏に、「人間関係を断ち切るためのコツについてご寄稿いただいた。(企画:ダイヤモンド社書籍編集局)

【要注意】職場の人間関係を一瞬で“崩壊”させるひと言・ワースト3Photo: Adobe Stock

「悪気はなかった」
「その気はなかった」
「冗談のつもりだった」

 セクハラ、パワハラという言葉が生まれて、もうどれくらい経つのだろう。

 さすがに、職場に上司の怒鳴り声が響くような環境ではなくなったが、それでも“加害者”本人すら気づかないような行為は横行しているように思う。

 私が以前に勤めていた会社に、落合さん(仮名)という先輩がいた。彼は、仕事はできるが雑な性格で、前述したようなハラスメント行為も目立ち、職場内ではセクハラ、パワハラの常習者という意味合いで“セ・パ両リーグの首位打者”と呼ばれていた。

 そんな落合さん、ついに女性社員からセクハラを会社に通報され、大騒ぎになった。

 会社側が落合さんにヒアリングすると、「その気はまったくなかった」と説明。社内の飲み会の流れで行った二次会の居酒屋で、冗談のつもりで放った一言が“デッドボール”になっていたことが判明。

 すると落合さんは自ら退職の道を選んだ。ずば抜けて仕事のできる人だっただけに、彼を評価する社員も一定数おり、有志で送別会が開かれることになった。それに、「冗談のつもりの一言で、結果的に“退場処分”を受けたようなものだ」と同情する声も上がっていたのである。

 ところが、その送別会に被害を訴えた女性社員も参加したことで、同席者たちはザワついた。なかには、こんなことを言って陰で女性社員を批判する連中もいた。

「自分が追い出したおっさんが泣くところを見に来たのか? あの女もたいしたタマだな」

 私も、そのときは被害女性の気持ちがわからず、困惑したことを覚えている。

縁を切るなら、
とことん離れる

 “人生の指標”となる言葉の数々を収録している本、『人生は「気分」が10割』の中には「縁を切るなら、とことん離れる」という項目がある。

 キレイさっぱり別れることにした――。あまりにも冷静で冷たいやつだと思われるかもしれない。血も涙もない人間だと恨まれるかもしれない。急に手のひらを返されたようで相手は傷つくかもしれない。
だけどこちらだって数えきれないほどの迷いを断ち切って決心したのだ。一度は心が通い合った人に対して背を向けるなんて、生半可な気持ちじゃできないから。
――『人生は「気分」が10割』(p.176)

 著者のキム・ダスル氏は、相手から同じ過ちや思いやりのない態度を繰り返され、被害者側はずっとがまんし続けていたはずだとしている。こういう被害者は、今度こそ変わってくれると期待してサインを送ったり、本音を打ち明けたりもしていただろうとして、次のように結論づけるのだ。

 それでも変わることはなかった。チャンスはいくらでもあったのに。
少しはマシになったかなと思っても、すぐに元通りになった。そのたびに傷ついてきたのは自分のほうだった。だから冷たいと思われても断ち切るしかなかった。自分を守るために。そして、自分のせいでつらい思いをしている周りの人たちのためにも。
――『人生は「気分」が10割』(p.177)

 被害女性は、落合さんのセクハラに耐え続けていたのだろう。だからこそ、自分の気持ちに区切りをつける意味で、あえて送別会に参加していたのかもしれない。

(本稿は、『人生は「気分」が10割 最高の一日が一生続く106の習慣』の発売を記念したオリジナル記事です)

柴田賢三(しばた・けんぞう)
大学卒業後、複数の出版社や不動産会社での社員を経てフリーライターとして独立。週刊誌、月刊誌、WEBメディアなどで記者、編集者を経験した。事件、芸能、スポーツ、サブカルチャーまで幅広く取材に携わり、のちに新聞やテレビでも大きな話題になったスクープをモノにしたこともある。