東日本大震災によって日本列島は地震や火山噴火が頻発する「大地変動の時代」に入った。その中で、地震や津波、噴火で死なずに生き延びるためには「地学」の知識が必要になる。『大人のための地学の教室』は、京都大学名誉教授の著者が授業スタイルの語り口で、地学のエッセンスと生き延びるための知識を明快に伝えている。今回、著者である鎌田浩毅氏へのインタビューが実現した。本記事では、地震と噴火が多い国を生きるための心構えについて聞いた。(取材・構成/小川晶子)

被災した都市Photo: Adobe Stock ※画像はイメージです

火山と地震がつくった美しい日本

――鎌田先生はもともと火山学者でいらっしゃいますよね。これまで地震や火山噴火のリスクについてお聞きしてきましたが、火山の魅力についても教えてください。

鎌田浩毅氏(以下、鎌田):火山は日本列島にさまざまな恵みをもたらしてくれています。

 そもそも私が地学に惹かれたのは、25歳の駆け出し研究者の頃、地球の美しさに心底感動したからです。広々とした九州の火山で、風を感じ、土の匂いを嗅ぎ、大地を直接肌で受け止めながら、山をひたすら歩きまわっていたんですよ。

『大人のための地学の教室』の中では自然災害のことをたくさん書きました。

 現在は千年ぶりの「大地変動の時代」で、東日本大震災以降、日本列島は地震と噴火が頻発する時代に入ってしまったんです。

 防災・減災の観点からも地学の知識が必要になっています。だから災害の話をすることが多いんですけどね。

 一方で、日本の美しさは火山や地震が作っているんです。日本列島は4つのプレートが重なった、世界的に特殊な場所にあります。

 ほかにない屈指の「変動帯」で、地震や火山の噴火が多いわけだけど、だからこそ変化に富んだ地形なんですね。土地によって植生が違い、湧き水があって温泉があって、美しい景観がある。山があって海に囲まれているから、山の幸も海の幸もある。恵みがいっぱいですよね。

 地震と火山の多い国であることは、我々日本人の性格にも影響しています。揺れる大地で生き延びるというのを5万年もやってきているんですよ。

 江戸時代、火山が噴火して江戸の町に1か月くらい火山灰が舞っていたけれど、それで町がダメになったわけじゃありません。ちゃんと復興してきました。大きな地震があっても、乗り越えてきているんです。

短い災害と長い恵み

鎌田:巨大地震も火山噴火も怖いけれど、生き伸びることさえできれば、その後は平穏で豊かな期間が長く続きます。「短い災害と長い恵み」なんです。

 富士山は噴火を繰り返してあの美しい姿になり、いまは300年静かなわけですから。十分な備えをし、一人ひとりが自分の命を守る意識を持つことで、また豊かな社会を築くことができると思っています。

 いまは地震が多いから、心配でこの本を買ってくださる方も多いのかもしれませんが、読むうちにあらためて日本の良いところ、恵みの部分にも着目していただけると嬉しいですね。そうすればあまり暗い気持ちにならなくて済むのです。

地学は一番身近な科学

――本書を読んで、あらためて地球ってすごいと思いましたし、地学という学問の面白さを感じることができました。

鎌田:地学は、自然科学の中でも一番身近な学問なんですよね。本書も数式は使わず、地震や火山のメカニズムがわかるようになっています。それが自分の生活にも関係するのだから面白いと思うんですよ。

 地球のすごさを少し勉強すれば、世の中のフェイクニュースにも騙されないようになります。地震や噴火が起こる具体的な日付が予知できたり、人間が地震、噴火を止めたり起こしたりはできませんからね。

 地学のリテラシーがあれば、いたずらに不安になることもありません。正しい知識で備えて、この「大地変動の時代」もたくましく生きていきましょう。

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

京都大学名誉教授、京都大学経営管理大学院客員教授
1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)を経て、1997年より京都大学人間・環境学研究科教授。理学博士(東京大学)。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション。京大の講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める人気の「京大人気No.1教授」、科学をわかりやすく伝える「科学の伝道師」。「情熱大陸」「世界一受けたい授業」などテレビ出演も多数。ユーチューブ「京都大学最終講義」は115万回以上再生。日本地質学会論文賞受賞。第54回ベストドレッサー賞(学術・文化部門)受賞。