東日本大震災によって日本列島は地震や火山噴火が頻発する「大地変動の時代」に入った。その中で、地震や津波、噴火で死なずに生き延びるためには「地学」の知識が必要になる。『大人のための地学の教室』は、京都大学名誉教授の著者が授業スタイルの語り口で、地学のエッセンスと生き延びるための知識を明快に伝えている。西成活裕氏(東京大学教授)「迫りくる巨大地震から身を守るには? これは万人の必読の書、まさに知識は力なり。地学の知的興奮も同時に味わえる最高の一冊」と絶賛されている本書。今回、著者である鎌田浩毅氏へのインタビューが実現した。本記事では、巨大地震を生き延びるための備えについて聞いた。(取材・構成/小川晶子)

日本は「大地変動の時代」に突入している。巨大地震を生き延びるために必ずやっておきたいこととは…京大名誉教授の「気になる答え」画像はイメージです Photo: Adobe Stock

すぐにやるべき地震への備えとは

――南海トラフ巨大地震、首都直下地震だけではなく、すべての地域で地震が起こりやすくなっているそうですが、地震への備えとして「これだけはやっておけ」というものを教えてください。

鎌田浩毅氏(以下、鎌田)最も大事なのは命を守ること、その次に経済を守ることです。命を守るためにまずやるべきなのは、家や職場などいつもいる場所で地震があったときに死なない・怪我をしないようにしておくことです。

 家具が倒れて来ないか、花瓶などガラス製品が倒れて割れないか、部屋に閉じ込められないか確認してください。家具は固定しておきます。

 揺れたら机の下にもぐるなど、頭を守ることをシミュレーションしておいてほしいと思います。

 もう一つは防災用品の準備です。揺れたときに助かっても、その後インフラの復旧には時間がかかりますから、その間耐えられるようにしておかなくてはなりません。

 水、食料、医薬品、簡易トイレ、懐中電灯などを準備しておいてください。水や食料は少なくとも人数×3日分。できれば1週間分置いておきたいところです。

 自分で自分を守るために、それぞれの人が備えておくべきことです。

外で地震に遭ったとき、すぐにやるべきこととは

――外で地震に遭ったときはどうすればいいでしょうか。

鎌田街を歩いていて地震に遭えば、割れたガラスが降ってきたり看板が落ちてきたりと危険です。とにかく頭を守るようにしてください。海の近くで地震が起きたら、すぐに高台に上がるようにします。

 南海トラフ巨大地震のような「海溝型地震」である場合、海底が隆起して津波がやって来ます。南海トラフ巨大地震の場合、高知県で34mの津波が来るとされています。

 一番早いところだと3分で来ます。ゆっくりはしていられませんが、地震が起きてから津波が来るまでには少しは時間があります。数分~10分あれば近くの高台に駆け上がれると思うんです。

 海岸で揺れを感じたら、とにかく高台に駆け上がるようにすれば助かります。

――活断層が原因の「直下型地震」である場合には津波は起きないとのことですが、どちらにしても揺れを感じたら高台に行ったほうがいいですね。

鎌田:そうです。揺れを感じたのなら駆け上がってほしいです。ハザードマップには危険な場所や避難経路が示されています。

 津波のリスクについても、何分で何mの津波が来るという予測が載っていますから、住んでいる地域のハザードマップをぜひ見ておいてください。知識によって命を守ることができます。

 英国の哲学者フランシス・ベーコンが言ったように「知識は力なり」なのです。

首都直下地震で怖いのは火災と群衆なだれ

鎌田:首都直下地震で怖いのが火災です。関東大震災では10万人の人が亡くなりましたが、9割が火災で亡くなったんです。津波は来ないけれど、火災に気を付けてください。

 それから、都心で被災したときは、路上で人がごった返して群衆なだれが起こることがあります。900万人くらいの人がいっぺんに帰ろうとすると危険なんですよ。

 だから、官庁・学校・会社に泊まるなどして、すぐには帰らない。家族に連絡をし、安否確認だけしたら3日くらいはとどまるようにしてほしいと思います。

企業がすべきこと

――経済を守ることに関してはどうでしょうか。

鎌田:企業はまず従業員の命を守り、その後は事業が継続できるような計画を立てておく必要があります。地震によって生産ラインが止まり、なかなか復旧ができなければ廃業に追い込まれるかもしれません。

 防災チームを立ち上げて、BCP(事業継続計画)の策定をする企業は増えています。まだのところは早めに進めていただきたいですね。

(本原稿は、鎌田浩毅著大人のための地学の教室に関連した書き下ろしです)

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

京都大学名誉教授、京都大学経営管理大学院客員教授
1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)を経て、1997年より京都大学人間・環境学研究科教授。理学博士(東京大学)。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション。京大の講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める人気の「京大人気No.1教授」、科学をわかりやすく伝える「科学の伝道師」。「情熱大陸」「世界一受けたい授業」などテレビ出演も多数。ユーチューブ「京都大学最終講義」は115万回以上再生。日本地質学会論文賞受賞。第54回ベストドレッサー賞(学術・文化部門)受賞。