東日本大震災によって日本列島は地震や火山噴火が頻発する「大地変動の時代」に入った。その中で、地震や津波、噴火で死なずに生き延びるためには「地学」の知識が必要になる。『大人のための地学の教室』は、京都大学名誉教授の著者が授業スタイルの語り口で、地学のエッセンスと生き延びるための知識を明快に伝えている。西成活裕氏(東京大学教授)「迫りくる巨大地震から身を守るには? これは万人の必読の書、まさに知識は力なり。地学の知的興奮も同時に味わえる最高の一冊」と絶賛されている本書。今回、著者である鎌田浩毅氏へのインタビューが実現した。本記事では、災害に関するデマにまどわされず、正しい情報を得る方法について聞いた。(取材・構成/小川晶子)

「地震の予知はできる? 人工地震は起こせますか?」…京大名誉教授の「気になる答え」とは画像はイメージです Photo: Adobe Stock

地震の正しい情報を得るには

――『大人のための地学の教室』には、地震のメカニズムがわかりやすく解説されています。「◯月◯日に地震が起こる」とか、「人工地震を起こすことができる」といった噂に踊らされ過度に不安にならないためにも、正しい知識を持っておくことは大事だと感じました。今後も正しい情報を得るためには何に気を付けたらいいでしょうか?

鎌田浩毅氏(以下、鎌田):よく言われているようにインターネット上の情報は玉石混交です。今はAIを使って適当に編集した情報が大量に出回る時代なので、その情報の発信元をよく見なければなりません。

 AIに質問しても、正しい答えが返ってくるとは限りませんよ。

 専門家が見ればすぐにわかりますが、よく知らない人はそれが正しいと思い込んでブログなんかにそのまま書いていたりするわけ。とんでもない偽情報だったりしますからね。

 インターネット上の情報は、内閣府や気象庁、都道府県が発信元のものを見ればいいでしょう。

 あとは、やはり本や雑誌です。印刷物はちゃんと編集、校閲が入っているから信頼できますよね。僕もそうだけど、本を出している人の講演会に一度足を運んでみるといいと思います。

 講演会には主催者がいて、参加者からの質疑応答もあります。怪しい情報は伝えにくいはずです。気になることがあったら質問してみてください。

具体的な地震予知はできない

――あらためてお聞きしますが、地震が起こる日を具体的に予知することはできないのですよね。

鎌田:何月何日という短期的かつ具体的な予知はできません。できるのは大まかな予測だけです。日本地震学会も短期予知はできないと明言しています。

 一方で地学には「過去は未来を解くカギ」というフレーズがあります。過去に発生した現象を詳しく解析することによって、確度の高い将来予測をするのです。

 過去の震災について書かれた古文書や、地質堆積物として地層中に残された痕跡から、今後起こりうる災害の規模と時期を推定します。

 現在最も心配なのは南海トラフ巨大地震で、2030年代に起こることが予測されています。海溝型の地震だから、過去から現在までのプレートの状態をもとに予測できるのです。

 一方、首都直下地震は何年代と言うこともできません。こちらは活断層による地震で、いつ起きてもおかしくないんです。明日かもしれないし、50年後かもしれない。

 被害の大きさから、南海トラフ巨大地震と首都直下地震を強調していますが、そのほかの地域だっていつ地震が起こるかわかりません。

 だから、日本中どこに住む人も地震への備えが必要です。

人間が地震に影響を与えることはできない

――もう一つ聞かせてください。これだけ科学技術が進歩しているのだから、人間の力で地震を抑えるようなことができたり、あるいは逆に地震を引き起こすことができたりするのではないか、と考える人がいてもおかしくない気はします。これも、できないのですよね?

鎌田:明らかにできません。人間が起こせるエネルギーの規模と、自然界が起こすエネルギーの規模とでは桁が違います。

 1000万倍とか1億倍とか違うんですよ。だからもう最初から無理でしょ?

 地震を止めることも噴火を止めることもできないし、特定の地域に地震を起こそうとするのもまず無理です。

 マグニチュードは1上がるごとに32倍ものエネルギー変化があるんですよ。その数字を見たら、僕たちはどれだけの規模かわかるんです。

 地学を学ぶと、わかってくると思いますよ。人間がやることと自然の力はあまりにも違うんだなということが直感的にわかる。

 10倍、100倍、1000倍、100000倍でどのくらい違うかとか、そういう感覚があるといいと思いますね。ぜひ地学を勉強してください。

(本原稿は、鎌田浩毅著大人のための地学の教室に関連した書き下ろしです)

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

京都大学名誉教授、京都大学経営管理大学院客員教授
1955年東京生まれ。東京大学理学部地学科卒業。通産省(現・経済産業省)を経て、1997年より京都大学人間・環境学研究科教授。理学博士(東京大学)。専門は火山学、地球科学、科学コミュニケーション。京大の講義「地球科学入門」は毎年数百人を集める人気の「京大人気No.1教授」、科学をわかりやすく伝える「科学の伝道師」。「情熱大陸」「世界一受けたい授業」などテレビ出演も多数。ユーチューブ「京都大学最終講義」は115万回以上再生。日本地質学会論文賞受賞。第54回ベストドレッサー賞(学術・文化部門)受賞。