森七菜さん主演の映画『炎上』が、公開から連日満席で話題だ。歌舞伎町・トー横に集う若者を描いた本作で監督・脚本を務めるのは、サラリーマンでありながらサンダンス映画祭で日本人初のグランプリを受賞した長久允氏。その思考法を存分に伝える『あなたにしか作れないけれど、世界に通用してしまう 脚本の教室』から、抜粋・再構成し、作品づくりの根幹に迫る。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
リアリティよりおもしろさ
――なんとなくリアリティのない会話になってしまった。
――「うん」とか「確かにね」など自然な相槌を入れていたら、冗長になりすぎた。
――プロットを進めるための「都合のいいセリフ(説明セリフともいう)」を言わせてしまっているのが、寒く見える。
映画学校の脚本の授業でも、よくこのような悩みについて取り上げられていました。
よくある回答としては、次のようなものが多いです。
「そもそも説明セリフは回避すべき。状況などセリフ以外で伝えられないか検証をすべき。やむなく会話中、ひとりの人物が説明セリフを長くしゃべっている事態を避けられないならば、聞き役側の人物にその内容を否定させましょう。そうすれば、より感情的にも1レベル上がった状態で、自然と説明を続けることができます。もしくは別の第三者が助け舟を出すなど、ひとりがしゃべり続けることを避ける方法をとりましょう」
非常に理にかなった回答だと思います。これもひとつの手でしょう。
しかし私は、こう考えます。
そもそも、リアリティなんて別になくてもいい。
そもそも、相槌は全部なくていい。
意味のある、もしくはおもしろい相槌はあってもいいけど。
「都合のいいセリフ(説明セリフ)」はあっていい。
おもしろければいい。憑依して書くべし。
と、そもそもの悩みの根本をとらえ直すべきだと思うのです。
そもそも映画は別にリアリティを追求しなければならないという縛りはありません(そういう良さのある映画ももちろんありますが、縛られるべきルールではない)。
もちろん題材を取材し、そのテーマにおける「リアル」はなんなのかはしっかりととらえる必要はあります。しかし会話やシーンにおいては、リアリティを最重要視する必要はないのです。
私たちが作っているのは、寓話なのだから。宇宙的なSFじゃなくても、題材が現代の社会だとしても、私たちが作ろうとしているのはファンタジーなのです。
意図がバレているから「寒い」
そして、説明セリフについて。
なぜ説明セリフがおもしろくないのか? ということを考えてみましょう。
それは物語を進める目的のために書かれていて、そのことが観客にバレているから寒いのだと思います。
なので、それが気づかれないくらい、違うベクトルの感情を感じさせればいいのです。
たとえば「おもしろい」もそのひとつです。なんとかユーモアを混ぜて乗り切ってください。
もしくは、それを根本から解決するために有用なのが、登場人物に「憑依」する作業です。誰かしら人物が憑依していたら、物語のためにセリフが存在することはありません。
その人物本人のうちから吐き出されるセリフになっているはず。
そもそもプロット構成以前にセリフを書く順序にしていれば、その「物語を展開しなければならないという目的」自体が存在していないので、そうなりようがないのです。
もしどうしても物語を運ぶためのシーンを追記しなければならないときも、その場所に、その人物を憑依させて書いてみましょう。なんとかなるはずです。
とにかくポイントは、物語の「展開」よりも、その「人物」のほうを大事に思う、ということです。
現実の隣人に敬意を払うように、物語の人物にも敬意と愛情を。

世界が注目する脚本家が初めて明かす、
「自分にしかできない仕事」のつくりかた
大好評、たちまち重版3刷!!!
Amazonランキング1位! (「映画の本(総合)」2026年2月21日~23日)
佐久間宣行さん、ラランド・サーヤさん絶賛!
「それっぽいもの」ではなく、
「本当に心を動かすもの」を
表現がいまいちしっくりこない。
この仕事、自分がやらなくてもいいような気がする。
もっとおもしろいものを作りたい。
そんな悩みに、現役サラリーマンでありながら、海外の映画賞で「日本人初」の快挙を総ナメしてきた著者が答えます。
どうしたら、自分だけの表現をし、それを成果に結びつけられるのか。
どんな人でも、「あなたにしか作れない作品」を生み出せるようになる、まったく新しい脚本術が誕生しました!

本当のことしか書いていない。
これからの「世界のスタンダード」を伝える一冊
いま世界で本当に評価されるものは、「何かに似ているもの」ではありません。
ハリウッドで必ず聞かれること。それは、
“What’s your VOICE?”
あなたのボイスは何ですか?
ということです。
つまり、他の誰でもない「あなたが」何を伝えたいか、ということ。
では具体的にどうすればいいのか。
すべてを自分で切り開いてきた著者が、包み隠さず伝えます。
真剣に表現したいと思う人、自分らしさを失わずに働きたいと思う人に、とても響く内容です。
本書の内容
はじめに
「この本の結論を先に言います。」
「それっぽいもの」は最低だぜ!
王道の脚本方式と完全自己流の脚本方式をミックスして
そもそも脚本家ってどうやってなったらいいかわからない問題
Lesson0 世界一になるまでの変則ルート
「私が映画を作ったのは32歳から! おせ~!」
一度は夢をあきらめて、就職! (挫折期)
CMプランナーから、店頭ビデオプランナーに (朦朧期)
倒れて気づく。「クライアントは自分」
そして世界一。日本人初の快挙を、まさか私が。
「そもそも映画ってなんなの?」
Lesson1 何を書く?
「脚本ってなんですか?」
設計図としての書式
Step0 私は何を書くべきなのかを見つける
Lesson2 王道! ハリウッド式脚本法
「で、どうやって書くの?」
Step1 「ログライン」を書く
Step2 登場人物を作り込む
Step3 3幕構成にする
Step4 シーンを作る シーンカード入れ替え検証
Step5 セリフとト書きを書く
Interval あなたが天才かどうかという重要な話。
Lesson3 誰でもできる長久式脚本法
「めっちゃ変な書き方。それでいい。」
Step1 はじめに「怒り」と「悲しみ」がある
Step2 音楽を見つける
Step3 エンドロールの歌詞を書く
Step4 映画のタイトルを決める
Step5 ポエトリーリーディング脚本法
Step6 そのセリフをシーンや人物に振り分ける
Step7 音だけの2時間映画を作る
Step8 直し続ける
Lesson4 迷ったとき役立つかもしれない裏技集
「何も浮かばないよ!」
裏技1 絶対に誰にも言いたくない思い出を書く。
裏技2 SNSには書けない「よくない感情」という金脈
裏技3 会話のセリフがうまく書けないなら
裏技4 設定がうまく伝わってないと感じたら
裏技5 タイトルから考えちゃうっていうのはどう?
裏技6 「ポエトリーリーディング脚本法」に欠かせない号泣プレイリスト
裏技7 「うまい」は敵!
裏技8 極論! 10年書かないでみる
裏技9 おもしろくなくてもいいじゃないか(本気で言っている)
Lesson5 書いたあとどうする?
「映像化しちゃう?」
お金集めをどうするか(自腹、賞金、クラファンそれぞれのやり方)
予算別! 映画の作り方(10万円、100万円、1000万円)
実写映画撮影現場での時間削減工夫集(事前準備と心持ち)
ロケ場所についての具体的解決案
Lesson6 あなたにしか作れないものがある
「情緒不安定なあなたは向いている」
「当事者しか知らない感情がある」
「だから、本当のことしか書かない」……