アメリカのオバマ元大統領アメリカのオバマ元大統領 Photo:AFP=JIJI

オスカーをめぐる“出来レース”疑惑。アカデミー賞の投票権を持つ映画芸術科学アカデミーの会員は映画人で構成され、業界の意向が反映しやすいとされている。だが、必ずしも主催者の意図通りに結果が決まるわけではなかった。ホワイトハウスすら巻き込む複雑な選考事情を、過去の事例から分析する。※本稿は、松崎健夫『アカデミー賞入門』(KADOKAWA)の一部を抜粋・編集したものです。

オスカー“出来レース疑惑”を
払拭した2017年の受賞事件

 2017年に開催された第89回授賞式では、作品賞の発表を最後に残した時点で、『ラ・ラ・ランド』(2016)が監督賞、主演女優賞、撮影賞、美術賞、作曲賞、歌曲賞の6部門を受賞していました。この年の最多受賞は確実だったのです。

 作品賞のプレゼンターは、ウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイのふたり。ウォーレン・ベイティは『レッズ』(1981)で第54回の監督賞を受賞、フェイ・ダナウェイの方は第49回の『ネットワーク』(1976)で主演女優賞を受賞したハリウッドの大物です。作品賞のプレゼンターは例年ハリウッドの大物が務めてきました。そして2017年は、ふたりが共演した『俺たちに明日はない』(1967)が公開されて50周年にあたる年だったのです。

 彼らが作品賞を発表する際、前代未聞のミスが起こりました。作品賞として『ラ・ラ・ランド』のタイトルが呼ばれ、登壇した関係者が受賞スピーチを開始。暫くして『ラ・ラ・ランド』のプロデューサーであるジョーダン・ホロウィッツがカードを掲げながら、「受賞したのは『ムーンライト』(2016)だ!」と困惑する会場に向けて改めて発表したのです。