JR四国の自立なくして
ローカル鉄道の再生はない

 決まった時刻に数百人単位で移動する通学需要は、地方において鉄道の大量輸送能力が求められる数少ない分野だ。2023年度鉄道統計年報によれば、JR四国の鉄道輸送人員は通勤定期が26%、通勤定期が39%、定期外が35%であり、通学利用者が最大顧客だ。これはJR旅客6社ではJR四国のみの特徴である。

 一方、最大70%以上の大幅な割引がされる通学定期利用者は、事業者にとって「割に合わない」顧客だ。旅客運輸収入に占める割合でみると、通勤定期が12%、通学定期が8%、定期外が79%。特急料金を含む定期外が大きくなるのは当然としても、通学定期のギャップが目立つ。

 同社の調査によれば、沿線の高校生に占める鉄道利用率は3~5割にとどまっており、通学需要にはまだ開拓の余地がある。また、鉄道通学経験者は大人になってからも鉄道を利用する傾向にあるといわれるように、潜在顧客に対する取り組みとしては大きな意義がある。

 もうからないからサービスが低下し、利用離れが進む、そんな負のスパイラルはローカル線をすりつぶしていく。逆に通学利用者にとって使いやすいサービスは、全利用者の利便性向上につながる。通学定期利用者を未来の顧客に育てる努力が評価され、報われる仕組みを作る必要がある。

 社会・文教政策上の要請から行われる割引は、鉄道事業者が負担すべきではないという主張はかねて存在するが、一時的な補助金などを除き、自治体の追加負担は現実的ではなかった。そこで提起したいのは、4月20日付記事で紹介した、ローカル線維持を目的とした「ユニバーサルサービス料金制度」の活用である。

 財源ができたとして、その配分と名目が論点になる。単なる赤字補填ではなく、経営努力に応えるものでなくてはならない。そこで、通学定期券の割引を全額補填することで、実際の利用者数に見合った費用を補填し、かつ、通学需要を開拓するインセンティブになる。例えば、JR四国の通学定期収入は約19億円(2023年度)だ。分かりやすくするために平均割引率50%として計算すると、同額の19億円が補助され、鉄道事業の収支は1割以上改善する計算だ(同様の計算で黒字化する地方私鉄は少なくない)。

 JR四国はこれ以外にも、香川県仲多度郡多度津町にある車両工場「多度津工場」の近代化工事、車両検査周期、保線業務の見直しなど、鉄道事業の効率化・省力化を進めているが、これら費用削減の取り組みは稿を改めて論じたい。

 JR四国の自立なくして日本のローカル鉄道の再生はない。私たちは地域の交通にどのように向き合い、関わるのか。JR四国が取り組む2031年度までの5年間は、この国に遺された最後の猶予なのかもしれない。