鉄道乗車券でバスにも乗れる
「モーダルミックス」を模索

 もうひとつが「モーダルミックス」だ。これは複数の交通モードを組み合わせた効率的な輸送を意味する用語だが、JR四国では現状、鉄道の乗車券で並行するバスを利用できる取り組みを指す。

 きっかけは2019年の牟岐線へのパターンダイヤ導入だった。利用者の多い徳島~阿南間が増発された一方、阿南以南の列車本数が減便されたことに徳島県は危機感を抱いた。県は徳島バスに働きかけ、通常は途中停留所で乗り降りできない高速バス(室戸・生見・阿南大阪線)を、牟岐線に並行する区間に限り利用可能な仕組みを実現した。 

 だが、目論見通りとはいかなかった。バスと牟岐線を乗り継ぐ場合、別個に運賃が必要だったため、1日あたりの利用者は数人にとどまったのである。これまでなら「実験は失敗」とされてもおかしくなかったが、三者はさらに踏み込んだ「共同経営」を模索する。

 このような取り組みは諸外国では見られるが、日本では独占禁止法に抵触する恐れがあった。そこで2020年施行の独占禁止法特例法に基づく大臣認可を得て、全国初の鉄道・バス事業者の共同経営が2022年4月に実現した。地域交通の合理化を妨げてきた法の壁を破った意味は非常に大きい。

 牟岐線阿南駅ではバスのりばへの案内表示はもちろんのこと、時刻表や改札口のLED発車標で、鉄道とバスを並行して案内したり、車掌による高速バス乗換案内を行ったりと、名実ともにサービスの一体化を進めている。

 バスを活用したところで鉄道の重い資本費負担は変わらず、バスもまた運転手不足など持続性に課題があるという指摘もあるだろう。だが、鉄道かバスかではなく、地域の当事者が課題を共有し、限られた資源を持ち寄りながら「ベター」を模索する取り組みとして意義は小さくないはずだ。

 現在は「実証実験」の形で、他路線にも広がっている。例えば、予土線宇和島~近永~松丸間で2024年10月から2025年1月にかけて行われたモーダルミックス実証実験では、宇和島~江川崎間(上り方面)のJR10本に加えてバス17本を利用可能とした。一部バスは鉄道と並行しないショートカット経路として、宇和島~近永間を鉄道が34~55分なのに対し、最短22分で直結した。

図52024年度予土線モーダルミックス実証実験時刻表(上り)(JR四国プレスリリースから抜粋) 拡大画像表示

 期間中、平日は高校生の通学、土休日は観光を中心に1443人の利用があり、特に下り方面の通学帰宅需要が大きかった。鉄道の運行時間帯だけでなく、同時刻に鉄道があっても上述のショートカット便を利用する動きも見られたという。

 利用者へのアンケートは好意的な意見で占められており、通学利用者、観光客ともに継続を望む意見が多かった。休日の部活動や試験期間中、夏休みの登校日など通常とは違う時間帯に登下校する場合でも、親に送迎してもらう必要がなくなったといった声もあったという。

 予土線では昨年7月~今年2月にも、バス定期券所持者もJRを利用可能にするなど内容を拡充して第2回「実験」を実施している。この他に、予讃線向井原~伊予大洲間、土讃線洲崎~窪川間、鳴門線などで実証実験が行われており、牟岐線に続く本格導入が期待される。