ピョートル自身が体現した「率先垂範」
これほどの改革が実現した背景には、ピョートル自身の「率先垂範」がありました。彼は机上の空論ではなく、実地で見て、触れて、自ら手を動かすことに徹底してこだわったのです。
ヨーロッパでは船大工として働き、帰国後は部下に直接指導を行うこともありました。
その生き方を象徴するのが、1725年冬の出来事です。52歳になっていたピョートルは、視察の途中で、増水した川を渡っていた船が座礁し、兵士たちが溺れかけている場面に遭遇します。すると彼は即座に川へ飛び込み、命懸けで兵士たちを救助しました。
しかし、その際に冷水を浴びたことで高熱を発し、持病が悪化してしまいます。この出来事が、彼の死を早める結果になったともいわれています。
率先垂範こそ、組織を動かすリーダーの原点
技術を学ぶときも、戦争を指揮するときも、そして兵士を救うときも、ピョートル1世は常に誰よりも先に動き、体を張って国を導くリーダーでした。その精神があったからこそ、ロシアは近代国家へと生まれ変わり、帝国としての確固たる基盤を築くことができたのです。
ピョートル1世が体現していたように、「率先垂範」や「指揮官先頭」、つまりリーダー自身が前面に立って考え、実行することは、リーダーに求められる重要な資質の一つだと私は考えています。
リーダー自身が理想の実現に向けて本気で取り組むからこそ、部下やメンバーも「自分も同じように行動しなければならない」と感じ、組織全体が力強く動き始めるのです。
現代の職場に生かす:「指揮官先頭」の実践
私は多くのお客様企業で「リーダー育成研修」を実施していますが、その中でも「率先垂範」や「指揮官先頭」の重要性をお伝えしたうえで、管理職の方々に行動計画を立ててもらい、実際の業務の中で実践していただいています。
例えば、重点テーマの一つであった「新規顧客開拓」を進める際、最初から各営業担当者に任せるのではなく、営業所長自らが営業担当者に同行し、新規開拓を推進したケースがありました。
行動計画の進捗報告の場で、その営業所長は次のように話されていました。
「自分が先頭に立って動くことで、各営業担当者が新規開拓に前向きに取り組むようになりました。『率先垂範』『指揮官先頭』の重要性を痛感しています」
いかに崇高な理想やビジョンを掲げても、その実現を部下やメンバー任せにしていては、ビジョンは決して実現しません。リーダー自身が最前線に立つことの重要性を、ピョートル1世の偉業は私たちに改めて教えてくれているのです。
※本稿は『リーダーは世界史に学べ』(ダイヤモンド社)の著者による特別原稿です。















