「不思議な表現だなあ」と思うものに、2013年5月まで、日米の金融市場で飛び交った「緩和の縮小の後退」というのがある。「縮小」と「後退」というネガティブな表現が打ち消しあって、結局、「金融緩和」が続くものであったらしい。

 2013年6月からは「後退」の文字が消え、「金融緩和の縮小」になった。この「緩和が縮小する」という表現が、そもそもわかりにくい。

「規制緩和」の反対語が「規制強化=引き締め」なのだから、「金融緩和の縮小」は「金融引き締めだ」──と単純に解釈してはいけないらしい。もし、金融緩和曲線というものが描けるならば、その曲線の接線の傾きが徐々に小さくなることを「緩和の縮小」というようだ。

 緩和が縮小するだけなのだから、金融緩和というベクトルに変わりはない。ただし、その伸びが少しずつ鈍化していく現象に「縮小」という表現があてられる。曲線上の接線の傾きが徐々に小さくなることを問題にしているのだから、「金融緩和の縮小」は、経済学でいう「収穫逓減」の話をしているようだ。

 これまた不思議に思う用語が、「ディスインフレーション」だ。インフレーションでもなければ、デフレーションでもない。もし、物価上昇率曲線というものが描けるならば、その曲線の接線の傾きが徐々に小さくなることをいうらしい。

 物価が上昇するというベクトルに変わりはない。ただし、その上昇率が徐々に鈍化する現象を、ディスインフレーションという。これもまた「収穫逓減」の話なのである。

ニッポンの投資家が
ハシゴを外された日

 もっと不思議に思う経済問題が、2013年5月下旬以降の日経平均株価の動きである。〔図表 1〕に、2013年5月以降のチャートを描いてみた。

 2013年5月22日まで、トントン拍子で上昇してきた日経平均株価が、翌5月23日に15,942円60銭の最高値を記録して以降、大きく下落している。上げ相場に乗っていた投資家にしてみれば、「ハシゴを外された」といったところだろう。