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社運を懸ける工場のセレモニーにしては、あまりにも地味な演出だった。4月22日、ダイハツ工業はインドネシア西ジャワ州に建設していた新工場の開所式を行なった。
開所式にはブディオノ・インドネシア副大統領が駆けつけたが、当初はユドヨノ大統領の出席が検討されていたことを考えると、格が下がったことは否めない。伊奈功一・ダイハツ社長の会見も開かれず、控えめな式典となった。
それもそのはずだ。この工場では、インドネシア政府が導入するエコカープラグラム「ローコスト・グリーンカー(LCGC)」の適用車が生産されることが決まっているのだが、肝心の政策決定がなされていない。その結果、公布が当初よりも1年以上も遅れている計算となる。
かねて、ダイハツと親会社のトヨタ自動車は現地政府と事前折衝を重ねており、競合に先駆けてLCGCの対象条件を絞り込んでいる。1億ルピア(約100万円)を切る低価格、低燃費、高い現地調達率の3条件を満たしたエコカーが対象となる模様だ。新工場でダイハツブランド「アイラ」、トヨタブランド「アギア」を生産し、トヨタ・ダイハツ連合は、LCGC適用第1号としてスタートダッシュをかける段取りだった。
そもそも、両社のインドネシア市場に対する思い入れは強い。競合のようにアジア共通車をインドネシア仕様に合わせて水平展開するのではなく、現地ニーズをくんだインドネシア専用車を投入してきた。その姿勢が市場でも受け入れられており、2012年度のシェアではトヨタ35.4%、ダイハツ14.6%となり、両社で同国の市場の半分を握っている。
今回のLCGC政策にかける意気込みも尋常ではない。2年以上も前に約210億円の投資を伴なう工場建設を決めて、インドネシア初の専用エコカーを誕生させる準備を周到に進めてきた。