発表時期が暗示する
燃料電池車の“存在感”

 なぜ各社、このタイミングなのか?

 1月後半、日米欧の大手自動車メーカーが相次いで、燃料電池車に関する技術提携を発表した。

 2013年1月24日、まずはトヨタとBMW。昨年6月に交わした各種共同開発について、正式契約を結んだ。具体的には、プレスリリースの順番で上から、燃料電池システム、スポーツカー、そして軽量化技術。さらに、次世代二次電池として、リチウム空気電池の開発でも合意した。「共同開発の燃料電池車の量産の目処は2020年」(内山田竹志・トヨタ副会長)だという。

 その4日後の1月28日、今後は、ルノー日産、フォード、ダイムラーの3社が燃料電池車の共同開発を発表した。量産は、早ければ2017年。

 本連載で既報の通り、1月はラスベガスでCES(国際家電ショー)、デトロイトで北米国際自動車ショーが開催され、自動車産業界では様々な新型車や新技術の発表があったばかり。そうした情報発信の絶好のタイミングをずらして、1月後半、各社が燃料電池車開発の連携を公にしたのだ。

 1月中旬前後に日米欧各地で、水素燃料のインフラや、燃料電池スタック(本体)に直接関わるような大きな動きが起こった形跡はない。

 また、世界の水素と燃料電池関連の学術関係者や業界関係者が一同に介する「水素先端世界フォーラム2013」(*1)で、自動車メーカー各社が燃料電池車の共同開発についてプレゼンをするとの事前情報もなかった。

 これはあくまでも筆者の推測だが、各社の協議は昨年中から粛々と進み、北米国際自動車ショーの場で、各社のCEOと技術系役員が最終合意。その後、各社の法務部が契約書作成の最終手続きに2週間前後を要したと思われる。無理をすれば、同ショーのプレスデー14日か15日に事前発表は可能だったはず。あえてそれをしなかったのは、プチバブルのように高級車で賑わうショー会場で、地味な技術論が主体となる燃料電池車の登場余地がなかったからだろう。

 それほどまでにいま、燃料電池車の存在感は薄いのだ。

(*1)2013年1月28日、30~31日、グランドハイアット福岡と九州大学伊都キャンパスで開催。主催は福岡水素エネルギー戦略会議、福岡県、九州大学、産業技術総合研究所・水素材料先端科学研究センター。