2025年の世界の財貿易額の伸びのうち、
AI関連財の寄与率

AI投資に救われた世界貿易、高関税でも昨年は5%近い伸び、2026年は2.5%へ減速か

 トランプ関税が世界貿易の逆風になるとの懸念をよそに、2025年の世界の財貿易は、価格を調整した量ベースで5%近い底堅い成長を記録した。世界貿易機関によると、昨年の世界貿易額の伸びのうち42%はAI関連財の貿易がもたらした。AI関連財とはAIの投資や利用に用いられる財を指し、半導体生産に必要な原材料や中間投入財、半導体製造装置やコンピューターなどの機械類が含まれる。

 世界の財貿易に占めるシェアが6分の1程度にすぎないAI関連財が昨年の世界貿易額の伸びの半分近くを占めたのは、22%という驚異的な伸びのおかげだ。米国を中心としたAI投資ブームに加え、そのほとんどがトランプ関税の対象外であることも影響している。

 世界貿易減速の起点になると予想された米国の輸入量も、昨年はAI投資ブームによる資本財輸入の急増で底堅く推移した。資本財輸入の増加分の9割近くは、コンピューター、同周辺機器、半導体によるものだ。特にコンピューターの輸入は、過去1年間で倍増した。

 ただ、米国の資本財輸入爆増の恩恵はITに強みを持つ台湾、マレーシア、韓国などに限られる。昨年の世界貿易額の伸びの7割近くをアジアがもたらした計算だ。

 AIブーム頼みの世界貿易は、見掛け以上に脆弱である点に留意すべきだ。資本財以外の米国の輸入の減少は著しい。食品、工業用資材、消費財、自動車の輸入量は今年2月時点で過去10年間のトレンドを10~25%下回る。トレンドを4割上回る水準にある資本財とのコントラストは鮮明だ。

 22%も伸びたAI関連財を除けば、世界の財貿易額の昨年の伸び率は5%を切っている。しかも、AI関連財以外の世界貿易額の増加を主に支えたのは、安全資産として価格が急騰した金だった。この点も世界貿易の基調の弱さを物語っている。

 AIブームの追い風は今後も続くが、今年から来年にかけて世界財貿易の伸びは、量ベースで昨年の5%弱から2.5%程度まで減速するとオックスフォード・エコノミクスは予測する。中国の輸出爆増に業を煮やしたEU(欧州連合)をはじめ、保護主義的な動きが世界的に一段と拡大するほか、中東情勢による世界経済の減速が逆風となる。

(オックスフォード・エコノミクス 在日代表 長井滋人)