「九条の大罪」で型破りな主人公・九条間人を演じた柳楽優弥「九条の大罪」で型破りな主人公・九条間人を演じた柳楽優弥 Netflixシリーズ「九条の大罪」より

Netflixで配信中のクライムエンタテインメント「九条の大罪」が注目を集めている。真鍋昌平氏の同名漫画を実写化した本作は、“法”を軸に描かれる骨太でリアルな描写が特徴だ。そこで、ドラマ版「九条の大罪」の法律監修を務めた國松崇弁護士と池田大介弁護士(池田弁護士は原作者・真鍋昌平氏から同名漫画執筆に際して実際に取材を受けた)に、同作を楽しむための「法律の見方」を聞いた。(清談社 石水典子)

柳楽優弥演じる型破りな主人公・九条の弁護が
危うくも魅力的なワケ

 ※以下、一部ネタバレが含まれます。

 半グレ、ヤクザ、前科持ち――社会の裏側を生きる厄介な依頼人の案件ばかりを扱う弁護士・九条間人を中心に、現代社会の闇を映す多様な事件と人間模様を描く、Netflixシリーズ「九条の大罪」。本作では、法律や実際の弁護士の仕事に関するセリフが飛び交う。これらのシーンのリアリティは、原作者・真鍋昌平氏による徹底した取材によって実現したものだ。

 多くのドラマの法律監修を手がけてきた國松弁護士は、本ドラマの法律監修で脚本に目を通した際、よくあるクライムサスペンスとは成り立ちがまったく違うと感じたと語る。

「法律的な根拠や実務上のリアルな判断に基づき、ひとつひとつのセリフやシーンが丁寧に描かれていると感じました。ベースがしっかりとした作品のため、今回の法律監修の仕事は、最後に少し削ったり、足したりして、よりリアリティを演出するためのいわば“最後の仕上げ”に近いものでした」(國松弁護士)

 こうした法的根拠に基づいた弁護が行われているにもかかわらず、九条の対応は視聴者にスリリングな印象を与える。それはなぜか。

 九条の特徴が如実に表れているのが、「弱者の一分」(第2・3話)編での対応だ。ヤクザの息子に利用された依頼者がコカイン所持で逮捕された際、依頼者の罪が営利目的ではなく単純所持となるように、また、依頼者がヤクザの罪も被る形で、九条は弁護を進めていく。

 依頼人の供述の仕方や主張の方向性は、弁護士による適法かつ適切な法的アドバイスを前提に、最終的には本人の意思に委ねるのが弁護士のスタンダードな手法だ。九条の誘導とも取れる踏み込んだ判断は、プロの目から見ても異端だという。それでも引きつけられるのはなぜか。

「通常、弁護士の仕事は事件単位で完結します。ですが、九条は『事件』だけではなく、『人』単位でも事件に関わろうとしている。依頼人の『人生』をも視野に入れ、より大局的な視点で、『この人』にとっての最適な手段を模索するというスタンスを取っていると感じます」と、國松弁護士は話す。依頼人の将来を守るために必要だと考えれば、あえて踏み込む。その姿勢が、九条というキャラクターを形作っている。

 作中では「法律では人は救えない」というセリフがたびたび登場する。法律は、あくまでルールに基づいて人権を守る仕組みや手段であり、個人の人生そのものを直接救ってくれる救世主ではない。九条は法の限界を理解したうえで判断し、あえてその外側に手を伸ばそうとする。だからこそ危うく、同時に魅力的なのだろう。