ハードボイルドで危うい
弁護士も憧れる九条の生き方
限られた情報の中で、弁護士に求められるのは「どの証拠(カード)を、どのタイミングで切るか」という高度な駆け引きだ。
「証拠を集め、犯罪を立証しようとする警察や検察官に対し、弁護士は依頼人を守るために徹頭徹尾ディフェンシブな対応を取ります。あくまでも人が人を裁くという裁判の世界では、事実というカードの見せ方や出し方で結果がガラリと変わる構造を持っています」(國松弁護士)
その最たる例が、九条がたびたび依頼人に強いる「カンモク(完全黙秘)」だ。警察の揺さぶりに乗らず、一切何も話すなという指示である。
「自白は強力な証拠となり得ます。法律上、自白だけでは有罪にできないとはいえ、自白で得た情報からまた捜査を行い、自白の裏付けとなる決定的な証拠が見つかる可能性もあります。そんなシビアな状況のなか、弁護人の立ち合いも認められていない被疑者・被告人は、いわば丸裸で日々刑事事件に取り組む百戦錬磨の取調官たちに相対しなければいけません。そのため、特に否認事件(無罪を主張する事件)などにおいて“カンモク”をすすめるのは、弁護方針として現実的な選択のひとつです」(池田弁護士)
「とはいえ、もし実際に『取り調べでなんて答えればいいですか?』と依頼人に聞かれた場合、『一切、何も喋らないでください』と伝えることは、弁護人としてそう軽々しく言えることではありません。プロの取調官を前に『カンモク』することがいかに難しく、依頼人にとって精神的な負担になるかを分かっていますからね。その点、九条はそういった甘えのようなものを廃し、あくまでも冷静に、依頼者にもきちんと覚悟を求めているように感じます。そこが九条弁護士の『静かな凄み』に繋がっているのかなと思います」(國松弁護士)
こうした九条の対応には、プロの弁護士も憧れるという。
「九条のような弁護士の生き方ってかっこいいんですよね。刑事事件や裁判の構造を完璧に把握し、その中でいわゆる『しっぽを出さない』よう、隙のないアドバイスに徹しています。身の回りの人に対しては人間的な一面を見せるところがある一方で、刑事弁護人としては、目の前の被疑者、あるいは被告人を守るために、世間から何と言われようが、プロとして冷静に『法的に勝てる道筋』をとことん追求し、実現する。その対応はハードボイルドで危うい。ですが、そこにこそ九条というキャラクターの魅力が詰まっていると感じます」(國松弁護士)
「九条は、自分を『思想信条がない弁護士』と言っています。自分自身の思想信条のために弁護活動をやってしまって融通が利かなくなってしまうことを危惧し、思想信条がないことを前面に出して『依頼人の利益(勝ち)』を取りに行く表現は、ある意味リアルで面白いと思います」(池田弁護士)
道徳や感情を挟まず、ルールの構造をハックする倫理ギリギリの法的な駆け引きの裏には、「依頼人を守り抜く」というプロフェッショナリズムがある。人間の業と社会の闇を浮き彫りにする『九条の大罪』は、リアルなリーガルドラマとしても楽しめるはずだ。
第一東京弁護士会。池田・國松法律事務所代表。2012年4月~2016年9月にTBSテレビ企業内弁護士としてコンテンツ制作に関わる契約法務を担当。番組制作、ネット配信、映画や舞台、大規模集客イベントなど、民間放送のキー局が行う多種多様なエンターテインメント事業に総合リーガルアドバイザーとして関与。退社後も、公共放送・在京キー局ほか複数のテレビ局と契約を結び、コンテンツ制作やメディアビジネス事業に関わる法務のほか、報道・ドキュメンタリー部門での記者取材やニュース素材編集に関するリスク管理、BPO対応、内部調査、広報対応などにも外部専門家として携わる。また、ドラマ・映画・小説など約50作品にも及ぶコンテンツの法律監修を務める。このほか、制作会社(アニメ含む)、映画会社、芸能プロダクション、広告会社、出版社、プロデューサー、監督、脚本家、俳優、タレント、スポーツ選手、政治家など個人・法人を問わず、様々なクライアントから依頼を受ける。法律監修作品に、「99.9-刑事専門弁護士-」シリーズ(TBS・2015~2021年)、「アンナチュラル」(TBS・2018年)、「半沢直樹」(TBS・2020年)、「クロサギ」(TBS・2022年)、「VIVANT」(TBS・2023年)、「アンチヒーロー」(TBS・2024年)、「有罪、とAIは告げた」(NHK・2026年)など多数。
東京弁護士会。池田・國松法律事務所代表。民事介入暴力対策特別委員会正委員(2024年度・2025年度副委員長)、原子力損害賠償紛争解決センター元調査官(2012年1月~2019年2月)、株式会社カスタマーズディライト(現DineVita Group 株式会社)元社外監査役、2020年度東京弁護士会法友会執行部等。弁護士業務として、個人の相続、離婚、交通事故、破産、消費者問題、芸能・YouTuber・VTuberなどの問題、民事介入暴力対策、各種交渉案件や刑事事件、法人・個人事業主の契約関係、労働関係、債権回収などを担当。メーカー、不動産、IT、派遣、マンガ出版、アニメ制作、音響制作、広告制作、テレビ制作、イベント、コンサルタント、医療(美容外科医など)、学校法人、飲食、アパレル、ペット事業など50社以上の顧問弁護士を務める。







