「いかに起訴されないか」に
重きを置くリアルな実務判断
一般的に、クライムエンタテインメント作品といえば、法廷での攻防が見どころとされる。だが、九条は「いかに起訴されないか」に重きを置く。池田弁護士によれば、「実際、起訴されてしまえば、有罪になる確率は極めて高い」ため、起訴される前の段階で事件を収めようとすることは、リアルな実務判断だという。
AV業界に居場所を見出した少女・笠置雫が登場する「消費の産物」編(第6・7話)では、出演強要を訴えられたAV制作会社から依頼を受け、九条は女優・白石桃花との示談を取り付ける。一見すると金で解決させたようにも見えるが、これは弱者を守る現実的な最適解になることもあるのだという。
「被害者が、自分一人の力で加害者から慰謝料などの賠償金を取ることは、現実的にはかなり難しい側面があります。加害事件が刑事裁判などに発展し、加害者に弁護人がついていればまだいいのですが、加害者に弁護人がついていなければ、被害者が自分自身で加害者に直接向き合わなければいけません。もちろん、被害者が加害者との交渉を弁護士に依頼することもできますが、そのためには自分で弁護士を探し、費用をかけて依頼する必要があります(※費用については収入要件を満たせば法テラスを利用することもできます)。また、加害者に支払う気がなければ、裁判を起こさなければならず、さらに手間と費用がかかるため、より大変です。だからこそ、このケースでは、九条は示談によって結果的に白石桃花も救ったともいえます」(池田弁護士)
その後、この少女は別の殺人事件で逮捕されるのだが、ここでの九条は精神鑑定や生育歴の調査に奔走する。実は弁護士は、警察が持つ証拠を起訴後まで見ることができない。「起訴前においては、被告人を含めた事件関係者へのヒアリングや証拠収集こそが弁護士の腕の見せどころであり、事件の結末を大きく左右する」という実務のリアルも、本作では克明に描かれている。
「弁護士は何も知らないところから弁護をスタートして、依頼人にヒアリングをします。事情を確認しながら、それらの話の裏付けが取れるように、証拠資料を調査し、さらに聞き取りを進めていきます。どれだけ有効な話や証拠を引き出せるかで判決の差が出るため、コミュニケーション力は弁護士の手腕を左右する大切な能力の一つです」(池田弁護士)
(左)池田大介弁護士、(右)國松崇弁護士







