「勉強ができるからほめるのではなく、ほめることで自己肯定感が上がり、子どもは勉強が好きになる」――進研ゼミの「赤ペン先生」全国代表である佐村俊恵さんは、こうした信念を持って、多くの子どもたちと接してきた。赤ペン先生の間で伝わる「ほめノウハウ」を使いながら、20年以上にわたり、のべ8万枚以上の答案を見続けてきたという。
この記事では、著書『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』の発刊を記念して、佐村さんに話を聞いた。
(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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「怒らないから言ってごらん」だけでは、子どもは口を開かない
――子どもが嘘をついたり、隠し事をしたり、明らかに様子が違うとき。親としてはつい問い詰めたくなりますが、佐村さんならどう接しますか?
佐村俊恵氏(以下、佐村) まずは「責めない」姿勢で聞くこと。これがいちばん大事だと思っています。「何かあった?」「モヤモヤしていることがある?」「助けられることがあるなら助けたいよ」と、寄り添うように声をかけますね。
そもそも嘘をついたり隠し事をするのは、子ども自身も「やってしまったな」と後ろめたく感じているからなんですよね。その気持ちをいかに和らげるか。たとえば「わかるよ、お母さんもこういう嘘ついたことがあるんだけどね。でも話したらスッキリしたんだよね」と、自分の体験を絡めて、口を開きやすい雰囲気をつくっていく。
そのうえで「これってどうしてこんなステップになっちゃったのかな」とゆっくり耳を傾ける。ただ「怒らないから言ってごらん」と一方的に促すのではなく、最初から最後まで子どもの隣に立つ。それがすごく大事だなと思います。
場合によっては厳しめに問いただしたほうがいいのではないかと思われるかもしれませんが、怒ってしまうと、子どもは「お母さんには何を言っても叱られるから、もう何も言わないでおこう」と思考が切り替わってしまうんです。
でも本来、子どもがいちばん話を聞いてほしい相手は、いちばん近い存在であるお母さんのはずなんですよね。だから話を受けとめる役目は、ご家族のかたにこそ担ってほしいなと思います。
反射的に怒らないための「アイスクリーム作戦」
――とはいえ、子どもの様子を見ると、話を聞く前に反射的に反応してしまいがちですよね…。
佐村 そうですよね。赤ペン先生は文面のやりとりなので、どう伝えれば子どもの心に届くかじっくり考える余地がありますが、おうちの方の場合、目の前のお子さんに対してストレートな言葉が出てしまうこともあると思います。
ただ、そこで子どもを否定するような言葉が出ると、信頼の糸がぷつんと切れてしまうので、ぐっと我慢したい。目指したいのは「イライラ親にならない」ことです。
イライラするということは、それだけ子どもにまっすぐ向き合っている証拠でもあるんですよ。でも、まずは「なぜ自分がそんなにイライラしているのか」を振り返ってみる。自分の心によく目を向ければ、「子どもが問題を起こしたことが、自分にとって悔しいから怒っている」など、子どもよりも「自分本位」な感情が先立っていることに気づくかもしれません。
もちろん、簡単にできることではないと思います。でも、感情をぶつけてしまえば、子どもの口はますます重くなる。
だから私の場合は、子どもが帰ってきたときの様子がちょっとおかしいなと思ったら、「アイスクリームを食べながら話す」という作戦をとっていました。学校の先生から「今日誰々さんとケンカしまして」みたいな連絡がきたときも、一呼吸置いてアイスを出してから話を聞くと、「なるほど、それが原因か」とわかるんですよ。
おやつを出すのは、話しやすい環境づくりのためという気遣いもありますし、私自身の心を落ち着けるためでもあります。膝詰めで「何があったの? 大丈夫?」と向き合うより、おいしいものでも食べながらのほうが、子どもも私も気持ちがほどけるんですよね。
問題を抱えた子どもに必要なのは「自分で考える時間」
――そのうえで、いけないことはいけないと、しっかり伝えないとダメですよね?
佐村 もちろんです。でも、それは子どもの気持ちが落ち着いてからでも遅くないはずです。頭ごなしに叱らずに、子どもが自らの行動を振り返る時間をつくってあげてほしいと思います。
本の中でもご紹介したエピソードなのですが、あるとき、赤ペンのおたよりコーナーに「赤ペン先生うるさい!」「赤ペン先生おまえ何歳?」などと乱暴な字で書いてきた子がいたそうです。
でも、その子は国語の答案に漢字1問だけ回答していたので、担当の先生はその漢字をしっかりほめて、答案を返送しました。
そうしたやりとりを数ヵ月続けていると、ある月、その子がおたよりに小さな字で「この前はごめんなさい」と書いてきたそうです。頭ごなしに叱らずに子どもに寄り添っていれば、子どもは必ず自分で反省するんですよね。
子どもに「正しさ」を押し付けるのではなく、自分で考える時間を残すことが、心からの気づきにつながるのだと思います。
(本記事は、佐村俊恵著・ベネッセ「進研ゼミ」監修『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』をもとに作成しました。)





