「勉強ができるからほめるのではなく、ほめることで自己肯定感が上がり、子どもは勉強が好きになる」――進研ゼミの「赤ペン先生」全国代表である佐村俊恵さんは、こうした信念を持って、多くの子どもたちと接してきた。赤ペン先生の間で伝わる「ほめノウハウ」を使いながら、20年以上にわたり、のべ8万枚以上の答案を見続けてきたという。
この記事では、著書『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』の発刊を記念して、佐村さんに話を聞いた。
(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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「文章が苦手」だった子が、教壇に立つまで
――子ども時代に「ほめられた経験」が、大人になってからの人生にまで影響を与えることはあるのでしょうか。
佐村俊恵氏(以下、佐村) 社会人になった「進研ゼミ」の元会員のかたからは、「赤ペン先生のひと言がきっかけで、自分の強みに気づいた」という声をいただくことがあります。
たとえば、ある元会員さんは、子どもの頃、自分では文章を書くのが苦手だと思っていたそうです。
でも、国語の作文で「この表現がすてきだね」と赤ペン先生にほめられたことをきっかけに、すっかり文章を書くのが大好きになったとか。今では教員として、子どもたちに「学ぶ楽しさ」を伝える仕事をされています。
私たちは「自分にはこんないいところがあるんだ」という自己認識こそ、一生の宝物だと考えています。小学校という早い時期に、自分の強みを言葉にしてもらえるかどうかは、その後「自分が本当にやりたいこと」を見つけるうえで、とても大きな力になるのです。
――教員になられた元会員さんは、赤ペン先生から受け取ったメッセージを、どのように今の子どもたちに伝えていらっしゃるのでしょう?
佐村 クラスに宿題をまったくやってこない子がいて、多くの先生があきらめていたそうです。でも、その先生は赤ペン先生式に、その子の「いいところ」を探そうとよく観察してみた。
そうしたら、かつての自分のように、作文がとても上手だということに気づいたそうです。「あの作文、とても面白かったよ」とほめたところ、それまでまったく出していなかった宿題を、少しずつ出してくれるようになったそうです。「勉強が苦手でほめられ慣れていない子ほど、声かけ次第で変わる」と実感したとのことでした。
赤ペン先生だけで大阪大学に合格した理由
――赤ペン先生の指導だけで有名大学に合格した会員さんもいらっしゃるそうですね。
佐村 はい。ある方は小学校6年生で「進研ゼミ」を始めて以来、中学講座、高校講座とずっと続けてこられました。途中で塾もやめて、最終的に赤ペン先生の指導だけで大阪大学に合格されたんです。
――塾もやめて赤ペン先生一本で、というのは驚きです。なぜそこまで赤ペン先生を選び続けたのでしょうか。
佐村 その理由がすごく印象的だったのですが、「赤ペン先生が、自分にNOと言わない唯一の人だったから」だそうです。
その元会員さんは、小さい頃から学校の通知表でも、偏差値でも、受験の模試でも、さらには就職活動でも、常に他の子と成績を比べられるのがストレスだったそうです。本人にとって「比べられること」は、自分の存在価値を否定されるのと同じだった。周囲からの評価が、常に自分の存在をおびやかしているように感じていたと言います。
でも、赤ペン先生とのやりとりだけは、そうした「NO」と無縁の世界だった。赤ペン先生は誰とも比べず、何も否定せず、ただただ前向きに勉強を応援してくれた。
そして勉強だけじゃなく、自分自身の存在そのものを応援してくれた。それが合格につながったし、その後の人生の励みにもなった、と言ってくださいました。
――「自分にNOと言わない唯一の人」という言葉は、重いですね。
佐村 本の中でも繰り返しお伝えしていますが、私たち赤ペン先生は「勉強ができるからほめる」のではなく「ほめるから勉強ができる」と考えています。
ほめ言葉をあたたかい光のように根気よく注ぎ続けることで、自己肯定感が育ち、勉強が好きになり、そしていつか必ず結果が出る。
これが57年間の私たちの結論です。
今お話しした元会員さんのエピソードは、まさにそれを体現している事例だと思っています。
(本記事は、佐村俊恵著・ベネッセ「進研ゼミ」監修『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』をもとに作成しました。)





