「勉強ができるからほめるのではなく、ほめることで自己肯定感が上がり、子どもは勉強が好きになる」――進研ゼミの「赤ペン先生」全国代表である佐村俊恵さんは、こうした信念を持って、多くの子どもたちと接してきた。赤ペン先生の間で伝わる「ほめノウハウ」を使いながら、20年以上にわたり、のべ8万枚以上の答案を見続けてきたという。
この記事では、著書『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』の発刊を記念して、佐村さんに話を聞いた。
(構成/藤田美菜子、ダイヤモンド社書籍編集局)
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「がんばろう」と「がんばったね」は別物
――親が良かれと思って使う「次こそはがんばろう」というひと言が、実は子どもをガッカリさせてしまう"NGワード"だと書かれています。
佐村俊恵氏(以下、佐村) 私は「がんばろう」という言葉と「がんばったね」という言葉は、まったく別物だと考えています。一見、すごくよく似ているのですが、言われた子どもにとっては、まったく違った意味で届いてしまうのです。
たとえば、お子さんがテストで思うような点数を取れなかったとします。そんなとき、おうちのかたは励ますつもりで「次はがんばろうね」と声をかけるんじゃないでしょうか。
失敗した今日より、明日に目を向けさせてあげたい、落ち込んでいる子どもの背中を押してあげたい――そんな気持ちがこもった、親身な言葉であることは間違いないでしょう。
ただ、言われた側の子どもはどう受け取るか。自分なりに一生懸命やったのに、お母さんには「今回はがんばっていなかった」と思われている――そんなふうに感じてしまう子が、本当に多いのです。自分のがんばりが「なかったこと」にされたように感じて、ガッカリしてしまう。せっかくの励ましが、逆効果になってしまうのです。
まずは「チャレンジする姿勢」そのものを認める
――言われてみれば、大人でも「次はがんばってね」と言われたら、励まされているどころか、むしろ叱られているように感じますね。では、どんなふうに声をかけてあげるのがいいのでしょうか。
佐村 大切なのは、結果ではなく「取り組みそのもの」に目を向けることです。
「今日もピアノの練習、がんばったね」「長い文章を最後まで読めたね」――そんなふうに、一つひとつの行動をていねいに認めていく。この積み重ねが、子どもの自己肯定感を育てる土台になるのです。
私が日々目にしている答案の中には、ほとんど何も書かれていないまま送られてくるものも少なくありません。
でも、考えてみればそれだってすごいことなんです。学校の宿題のように「出さなきゃならない」ものではないのに、忘れずに赤ペンを送ってきてくれた。それだけで、その子の前向きな意欲が伝わってくると思いませんか?
だから私は、「今月もちゃんと提出できたね」「最後まで問題を読んで考えようとした跡があるよ、がんばったね」といったメッセージを書き込むようにしています。結果として空欄でも、提出に至るまでのどこかに、必ず何かしらの「チャレンジ」はあるわけですからね。
――親としてはどうしても「もっとこうすればいいのに」という部分に目が行きがちですが、そこをぐっとこらえて、がんばった部分を見つけてあげることが大事なんですね。
佐村 そうなんです! 「こうすればもっとよくなるのに」という気持ちは、親心としてはすごく自然だと思うんですよ。ただ、そこにばかり意識が集中してしまうと、わが子ががんばっている部分がかえって見えなくなってしまう。
「最近、あまりほめていないかも」と思ったら、まずは一度立ち止まって、お子さんががんばっている姿をよく観察してみてほしいなと思います。
子どもは「自分を見てくれている人」のためにがんばる
――「結果」よりも「過程」をていねいに見るという視点は、つい忘れがちですよね……。
佐村 親としては、つい「結果」に目が向いてしまうのもわかります。ただ、子どもにとっては、自分ががんばっているところをいつも近くで見てくれている人がいるということ自体が、本当に大切なんですよ。
私自身にも、忘れられない苦い思い出があります。以前、毎回とてもていねいに赤ペンに取り組んでくれていた会員さんがいたんです。そのがんばりに、私も花まるをつけたり、メッセージを書いたりして応えていたところ、答案のおたよりコーナーにお気に入りのシールを貼ってくれるようになって。「赤ペン先生大大大好き!」「勉強、超楽しい!」なんて書いてくれるようになって、本当にいい信頼関係が築けていたんですね。
ところがあるとき、私がやむをえない事情でお休みをとったことがありまして、代わりの先生がその子の答案を担当したんです。そうしたら次の答案に、「このまえ、なんでさむら先生じゃなかったの? やる気なくした~」と書かれていて……。
頭ではわかっていたつもりでしたが、子どもにとっては「ずっと自分を見守り続けてくれている存在」が、こんなにも大切なんだと痛感した出来事でした。
――子どもは「勉強ができるようになりたい」という以上に、「見ていてくれる人に認めてほしい」という気持ちで机に向かっている、ということですね。
佐村 まさにそうです。大人は点数や順位といった「成果」を重視しがちですが、子どもたちは、そんな一時的な結果よりも、自分のことをちゃんと見てくれている人に喜んでほしくて、勉強をがんばっているんです。
「努力したことはちゃんと認めてくれる」「自分のことをよく見てわかってくれている」――そんな安心感こそが、子どもの次のやる気につながっていきます。「次こそはがんばろう」を「今日もがんばったね」に変えるだけで、子どもは前向きに、自分から勉強に向き合うようになりますよ。
(本記事は、佐村俊恵著・ベネッセ「進研ゼミ」監修『57年間、9200万人の子どもを励まし続けた 赤ペン先生のほめ方』をもとに作成しました。)





