どうすればお金をかけずに、売上や利益をもっと増やせるのか? この切実なお悩みに答えるのが、人気の販促コンサルタント・岡本達彦氏の最新刊客単価アップ大事典 「つい買ってしまう」販促の仕掛け75』(ダイヤモンド社刊)です。同書は、「行動経済学×現場目線」で「つい買いたくなる」販促の仕掛けとは何かを言語化した初の書。本書が提示するのは、「お客様の購買行動そのものを変える設計とは?」です。どうすれば、「利益が残る経営」へと変われるのか? 本連載では、『客単価アップ大事典』に収録しきれなかった事例の中から、現場ですぐに導入でき、成果につながりやすい客単価アップの仕掛けを厳選してご紹介していきます

なぜ高級ホテルや旅館の売店では、あえて「その土地の作家による一点物」を並べるのか?Photo: Adobe Stock

「ここでしか出会えない」という運命を感じさせる理由

 観光地の大きなホテルの売店。どこでも買える定番のお菓子に混じって、地元の職人が作った数万円もする陶器やガラス細工が一点だけ、スポットライトを浴びて展示されていることがあります。

「売店でこんな高いものが売れるの?」と思うかもしれませんが、実はこれ、旅の「高揚感」を「確信」に変えて、客単価を跳ね上げる強力な仕掛けです。

「今、この場所」だけの価値

 人は「いつでもどこでも手に入るもの」には厳しい価格比較を行いますが、「今、この場所でしか手に入らないもの」に対しては、比較そのものを停止させます。

 これが「希少性の原理」です。大量生産品ではない「一点物」という情報は、お客様に「今買わなければ二度と出会えない」という損失回避の心理を強く働かせます

 その結果、通常の買い物では躊躇するような価格であっても、「旅の思い出」という付加価値とともに、納得して購入されるのです。

「モノ」を「物語」に変える

 一点物には、必ず作り手の想いやその土地の背景といった「物語」が付随します。お客様がその商品を購入することは、単に物理的なモノを手に入れるだけでなく、宿泊したホテルの体験や旅の情景という「エピソード記憶」を呼び覚ますトリガーを持ち帰ることを意味します。

「あのホテルのあの場所で出会った」という鮮明な記憶のフック(記憶の引き金)となるため、購入後の満足度が非常に高く、家に帰った後もその商品を見るたびにホテルの価値が再認識され、将来のリピートにもつながるのです。

他のお店でも使える「一点物」の演出

 ・ セレクトショップ
 定番品の中に、「一点物のハンドメイド雑貨」を展示する

 ・ 家具店
 「その土地の古材を再利用した、一点物のスツール(椅子)」を展示する

 ・ カフェ
 近所の陶芸家が焼いた、「世界に一つだけのカップ」を展示する

まとめ

 一点物を売店に置くのは、

 ・ 「希少性の原理」により、ネット最安値との比較を無効化させる
 ・ 「物語(ナラティブ)」を付加することで、商品の価値を感情的に格上げする
 ・ 「エピソード記憶」を物理化し、お客様とお店の絆を長期的に維持する

 という、単なる物販を超えて「体験の記憶」を販売し、客単価とロイヤリティを同時に高める戦略なのです。

岡本達彦(おかもと・たつひこ)
販促コンサルタント
現場目線ですぐ使えるマーケティングを伝える第一人者。
広告制作会社時代に100億円を超える販促展開を見て培った成功体験をベースに、むずかしいマーケティングや心理学を使わず、
アンケートやマンダラ等を活用して、誰でも売れる広告を作れる手法を体系化する。
業界を問わず即効性が高く、お金をかけずに売上を上げられることから、全国の商工会議所・経済団体などからセミナー依頼が殺到する。
初の著書『「A4」1枚アンケートで利益を5倍にする方法』(ダイヤモンド社)は、Amazon上陸15年、「売れたビジネス書」50冊にランクインする。
他の著書に、『お客様に聞くだけで「売れない」が「売れる」に変わるたった1つの質問』
『あらゆる販促を成功させる「A4」1枚アンケート実践バイブル』
『「A4」1枚チラシで今すぐ売上をあげるすごい方法』『「マンダラ広告作成法」で売れるコピー・広告が1時間でつくれる!』(以上、ダイヤモンド社)等がある。