「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…

など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

いつもネットが荒れまくっている理由・ワースト1

ネットが荒れまくっている理由

 SNSを見ていると、不思議なことがあります。

 同じ言葉を使っているはずなのに、なぜか話が噛み合わない
 そして、お互いに「そんなこと言っていない」「いや、そういう意味だろう」と言い合いながら炎上していく。

 なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その理由を「人によって、言葉の中身が違うからだ」と説明しています。

理解には「2種類」ある

 本書では、まずこんな話が紹介されています。

言葉の理解には2つあります。
ひとつは、ふわっとした理解。
経験のない状態で、「理解した」と思っている状態です。
もうひとつは、地に足のついた理解。
何かを経験した結果、「わかった」と思っている状態です。
これをビジュアルで捉え直すと、言葉は、『似たようなものをぐるっと囲んでラベルを貼ったもの』です。
ここから、この囲まれているものたちのことを「中身」と呼びたいと思います。
この「中身」を箱に詰めているという状態を想像してみてください。
そして、箱の外側にラベルを貼ります。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 この「箱」のたとえは、とてもわかりやすいものです。

 たとえば、「努力」という言葉。
 ある人にとっては、毎日深夜まで働くことかもしれない。
 別の人にとっては、効率化して短時間で成果を出すことかもしれない。

 同じ「努力」というラベルを使っていても、中に入っているものは違うのです。

「自分の箱を相手も持っている」という思い込む

 本書では、さらにこう続きます。

私たちの頭の中には、自分の知っている言葉の数だけ箱があります。
自分の持っている箱の数は、自分の語彙数です。
「言葉にできない」感覚や感情は、これらの箱には入っていないということです。
「言語化」とは、「まだラベルの貼られていないもの」にラベルを貼ること
箱のたとえで言えば、どの箱に入れるのがふさわしいかを決めるということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 私たちは普段、自分の頭の中にある箱を当然のものとして扱っています。

 だから、「常識」「自由」「公平」「差別」「責任」といった言葉を使うときも、自分が思っている意味で相手も理解していると思ってしまう。

 しかし、実際には、箱の中身は人によって違う

 経験が違う。
 育った環境が違う。
 見てきたものが違う。

 だから、同じラベルでも、中身は一致していないのです。

SNSの論争は「箱の中身」の争い

 本書では、最後にこう語られています。

言葉でのコミュニケーションは、ラベルを使って行ないます。
でも、他人の頭の中にある箱は、目に見えません。
だからつい、自分が持っている箱と同じ箱を他人も持っていると思ってしまう。
自分が持っているラベルを使えば、相手にも伝わるはず、と信じて発言するわけです。
たとえば、SNSで繰り広げられる論争の多くは、お互いに同じラベルを使って行なわれています。
でも、箱の中身は人によってちがう。
だから『すれちがい』が起きても、なぜすれちがうのかに気づきにくいのです。

――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、ネット上の炎上を見ているとよくわかります。

 たとえば、「努力」という言葉をめぐって議論している人たちがいる。
 しかし実際には、「努力」の定義が違う。
「自由」を語っている人たちも、「自由」の中身が違う。

 それなのに、同じ言葉を使っているから、「話が通じているはずだ」と思ってしまう
 結果として、「相手がバカだから理解しない」と考えてしまうのです。

賢い人は「中身」を見る

言語化だけじゃ伝わんない』は、コミュニケーションの本質を教えてくれます。

 私たちは、言葉を使って会話しています。
 しかし本当にやり取りしているのは、言葉そのものではありません。

 その言葉の裏側にある「中身」です
 だから、賢い人ほどすぐに反論しません

「この人の言う『努力』って何だろう?」
「この人の言う『責任』ってどんなイメージだろう?」
「どんな経験からその言葉を使っているんだろう?」

 と考える。つまり、ラベルではなく箱の中身を見ようとするのです。

 ネットがいつも荒れている理由は、意外と単純かもしれません。
 みんな同じ言葉を使っているのに、違う箱を見ながら話している。
 そして、そのことに誰も気づいていない。

 それこそが、「すれちがい」が終わらない最大の理由なのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。