「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

人を不快にする人
「この人、会ったばかりなのに決めつけてくるな」
そんな人に出会ったことはないでしょうか。
少し話しただけで、
「あなたってこういう人だよね」
「もうだいたいわかったよ」
と言ってくる。
言われた側は、なぜかモヤモヤします。
『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、その理由を「人間理解の浅さ」にあると説明しています。
実は、人を不快にする人ほど、「少ない情報で結論を出す」のです。
一度見ただけで、わかった気になってはいけない
本書では、まずこんな指摘がされています。
そこで私がみなさんにオススメしたいのは、「視覚情報をたくさん見ること」です。
経験できないことを、目で見ることで補うのです。
ただし、何かひとつ見ただけで「わかった」と思ってほしいわけではありません。
「百聞は一見に如かず」と言いますが、本当は一見だけで満足してはいけないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
私たちは何かを見ると、すぐに理解した気になります。
ニュースを一本見る。SNSの投稿を一つ読む。誰かと一度会う。
それだけで、「なるほど、こういうことか」と結論を出してしまう。
しかし、本当にそれだけで理解できるのでしょうか。
本書は、その危険性を指摘しています。
なぜ「全部わかった」と言われると不快なのか
その理由について、本書ではこう語られています。
それと同じように、私たちも何かを一度見ただけで「わかった」と思い込んではいけません。
これは、イラストを描くときにも注意している点です。
描きたいモチーフがあったら、資料をなるべくたくさん見るようにしているのです。
誰かの似顔絵を描くときも、なるべく複数の写真や映像を見るようにしています。
同じ人物の写真を複数見てみると、同じ人なのに別人のように見えることがあります。
1枚だけでその人を判断していたら、似顔絵にならないかもしれないのです。
写真を1枚だけ見て、その人のことをわかったと思うのはかなり危険な行為です。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは、人間関係にもそのまま当てはまります。
人にはいろいろな顔があります。
職場で見せる顔。友人の前で見せる顔。家族の前で見せる顔。
落ち込んでいる日の顔もあれば、絶好調の日の顔もある。
それなのに、一度会っただけで「あなたはこういう人だ」と決めつけられたら違和感があるのは当然です。
なぜなら、自分自身が、自分にはもっと多くの側面があることを知っているからです。
人を理解するには「コレもそう」が必要
本書では最後にこう語られています。
これはあくまで簡易的に物事をパッとわかってもらうためのものです。もし、地に足のついた理解をするのであれば、「コレ」と1回指さすだけでは足りません。
「コレもそう」「コレもそう」……と、大量に指をさしていく必要があるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここに、人間理解の本質があります。
優れた上司は、部下を一度の失敗で評価しません。
優れた編集者は、一冊の原稿だけで著者を判断しません。
優れた営業は、一回の商談だけで顧客を決めつけません。
なぜなら、人は一つの場面だけではわからないからです。
何度も会う。さまざまな状況を見る。成功した場面も、失敗した場面も観察する。
そうやって少しずつ理解に近づいていくのです。
「わかったつもり」が人間関係を壊す
『言語化だけじゃ伝わんない』は、理解することの難しさを教えてくれます。
人を不快にする人は、「あなたのこと全部わかる」と言います。
しかし、それは相手を理解しているからではありません。
むしろ、理解しようとすることをやめている状態です。
本当に賢い人ほど、「まだわからない」と考えます。
そして、もう少し見てみようとする。
もう少し話を聞いてみようとする。
もう少し観察してみようとする。
人間関係に必要なのは、理解したという自信ではありません。
理解し続けようとする姿勢なのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








