「“言語化”疲れで、“言語化”という言葉にモヤモヤする」
「即答するよりじっくり考えるほうが大事なのでは?」
「別に“口下手”のままでもいいじゃないか!」…
など、まったく新しいコミュ力を説いた書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』が発売された。著者でイラストレーターのヤギワタル氏は、これまで200冊以上の書籍でイラストや装画を担当してきて、今回が初の単著となる。本書では、昨今の「言語化ブーム」に対して警鐘を鳴らし、「言語化“以外”に目を向けること」をイラストレーターならではの視点で面白く解説している。本記事では、その中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「めっちゃ頭いい!」と感じる人
「頭がいい人」と聞くと、語彙力がある人や、難しい言葉を知っている人を思い浮かべるかもしれません。
しかし、『言語化だけじゃ伝わんない』という本では、少し違う見方が紹介されています。
本当に頭のいい人とは、「たくさんの言葉を知っている人」ではありません。
その言葉が指している現実を、具体的にイメージできる人です。
つまり、言葉と現実が結びついている人なのです。
頭のよさは「見たことの量」で決まる
本書では、まずこんな指摘がされています。
だから普段から、自分の生活圏から離れた場所の視覚情報を見ておくことも大切です。
そのために、他人の目を借りましょう。
つまり、他人が撮影した映像を見るのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは非常に興味深い考え方です。
私たちは普段、自分が経験した範囲でしか物事を理解できません。
しかし人生は有限です。
すべての仕事を経験することも、すべての国に行くこともできません。
だからこそ、「他人の目」を借りる。
映像やドキュメンタリーを通じて、自分の知らない世界を見ていくのです。
言葉だけでは、本当の理解にならない
本書では、こんな具体例も紹介されています。
たとえば、『潜入!ブラックマーケットの実態』という番組では、ジャーナリストが恋愛詐欺や麻薬取引、偽造紙幣などの犯罪を行なっている人に直接取材しています。
麻薬を製造、密輸する現場に出向き、その方法を実際に撮影しているのです。
コカインをつくるために、コカの葉っぱを踏み潰す作業の映像を見たとき、私は、これも「麻薬製造」なんだ、と言葉を捉え直しました。
こういう映像を見ておくと、ニュースで「麻薬密売」などの言葉が出てきたときにも、パッとイメージと結びつきます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
たとえば、「麻薬密売」という言葉。
多くの人は意味を知っています。
しかし、その現場を実際に見たことはありません。
だから言葉だけの理解に留まる。
一方で、映像を通じてでも現場を見た人は違います。
ニュースでその言葉を聞いた瞬間、具体的な情景が頭に浮かぶ。
理解の深さがまるで違うのです。
頭のいい人は、自分の世界の外を見ている
本書では最後にこう語られています。
テレビでもときどき裏側の取材をしていますし、最近では会社が公式で工場の映像を発信していることもあります。
自分で行けない場所は、他人の目を借りて見ていく。
擬似的に経験を積んでいくのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ここに、本当に頭のいい人の特徴があります。
彼らは、自分の専門分野だけを見ていません。
工場の仕組みも知っている。物流の現場も知っている。海外の文化も知っている。職人の仕事も知っている。もちろん、すべてを経験しているわけではありません。
しかし、映像や本や取材を通じて、自分の世界の外側を見続けているのです。
だから言葉の解像度が高い。だから話が具体的で面白い。だから「この人、頭いいな」と感じるのです。
知識よりも、「見たことがある」が強い
『言語化だけじゃ伝わんない』は、知性の正体について新しい視点を与えてくれます。
頭のいい人とは、難しい言葉を知っている人ではありません。
言葉の裏側にある現実をイメージできる人です。
そして、その力を育てる方法は意外とシンプルです。
自分が行けない場所を見る。自分が体験できない人生を見る。自分とは違う世界を覗いてみる。
つまり、「他人の目を借りること」です。
たくさんの言葉を覚えることよりも、たくさんの現実を見ること。
その積み重ねが、人の理解力を深くし、「頭のいい人」をつくっていくのではないでしょうか。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。








