体重や血糖値を気にして、「糖質は抜けば抜くほどいい」と思っていないだろうか。たしかに、糖質を減らす食事法には短期的な成果が見られることもある。だが、体の反応はそう単純ではない。極端な糖質制限は、集中力の低下やだるさを招くこともあるのだ。1万人以上の患者を診てきた医師が、医学的根拠に基づいて執筆した『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から、一部を抜粋・編集しそのヒントを紹介する。

【医師が教える】糖質は抜けば抜くほどいいのか? 体の反応はそう単純ではないPhoto: Adobe Stock

糖質制限の落とし穴

 近年、糖質を極力減らす食事法が注目を集めており、短期的には体重や血糖値の低下といった成果が見られることもある。しかし、行きすぎた制限を長く続けると、思わぬ落とし穴にはまることがある。

 そもそも、脳や赤血球は主にブドウ糖をエネルギー源としている。特に赤血球は、エネルギー源としてブドウ糖しか利用できない。そのため、体は常に一定量のブドウ糖を確保しなければならない。

 体内で他の栄養素からつくり出すことも可能ではあるが、一般的な食事パターンを前提とした場合、成人では1日130グラム以上の炭水化物摂取が推奨されている(*1)。

 糖質を極端に減らすと、食事からの供給が不足するため、体はアミノ酸や脂肪由来のグリセロールなどからブドウ糖をつくり出すプロセス(糖新生)によって補おうとする。この適応が進むまでのあいだ、集中力の低下やだるさを感じる人もいる

 また研究では、炭水化物が総エネルギーに占める割合と死亡リスクのあいだには、少なすぎる場合でも多すぎる場合でも、死亡リスクが高くなるというU字カーブの関係が報告されている(*2)。

 もちろん、減らした炭水化物を肉やバターなどの動物性食品に置き換えるのか、あるいは豆やナッツなどの植物性食品に置き換えるのかによって結果は変わってくる。しかし、極端に少なくすることも、極端に多くすることも、長期的な健康の面で有利とは言いがたい。

 つまり、「糖質は悪であり、抜けば健康になる」という単純な話ではない。必要な量をきちんと確保した上で、どのような質の糖質を、どのようなタイミングで、何と組み合わせて摂るかを考えることが大切だ。それが、健康とパフォーマンスを両立する上で重要になる。

注釈
1.Trumbo P, Schlicker S, Yates AA, Poos M, Food and Nutrition Board of the Institute of Medicine, The National Academies. Dietary reference intakes for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein and amino acids. J Am Diet Assoc. 2002 Nov;102(11):1621-30.
2.Seidelmann SB, Claggett B, Cheng S, Henglin M, Shah A, Steffen LM, et al. Dietary carbohydrate intake and mortality: a prospective cohort study and meta-analysis. Lancet Public Health. 2018 Sep 1;3(9):e419-28.

(本稿は『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から一部抜粋・編集したものです。)