一人ひとり、財産の状況もリスクに対する許容度も異なります。齢を重ねるにつれてリスク資産の割合を引き下げていくという考え方は不変ですが、どの程度の割合にしていくかは人それぞれです。また毎年きっちり計算する必要もありません。
数年に一度、年齢や生活の変化を確認しながら、リスク資産を少しずつ取り崩し、安全性資産に移していく。それだけで十分です。大切なのは、年齢とともにリスクを下げていく方向性を持つことです。
この考え方が合理的なのは、次の理由からです。
●年齢を重ねるほど、相場が回復するのを待てる時間は短くなる
●一方で、年を取るにつれて「いつか使うお金」よりも「今使えるお金」の重要性が高まる
●リスク資産を少しずつ減らしていくことで、大きな値動きに一喜一憂せず、落ち着いてお金を使えるようになる
つまり、リスクは若いうちに多く取り、年齢とともに自然に下げていくという、人間のライフサイクルに合った設計なのです。
相場が大きく下がった年は
無理に売らなくていい
取り崩しで多くの人が不安に感じるのが、相場が大きく下がった年に、株式を売ってよいのかという点です。
ここで重要なのは、安全性資産で生活費が十分に確保されているのであれば、取り崩しのために必ずしもリスク資産を売る必要はない、ということです。
安全性資産をあらかじめ組み合わせておけば、相場が好調な年は、計画通りリスク資産を取り崩し、相場が大きく下がった年は必要がなければ無理に売らず、安全性資産から生活費を賄うという選択ができます。
大切なのは、リスク資産を取り崩すことを「守りに入った」「失敗した」と考えないことです。それは、使うために準備してきた資産を、予定通り使っているだけなのです。
オルカンは、「一生持ち続けるための資産」ではなく、人生の時間軸を支えるための資産です。
増やす時期があり、使う時期があり、そして穏やかに減らしていく時期がある。その流れ全体を受け入れたとき、資産運用は、初めて人生ときれいに重なります。
『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(代田秀雄、Gakken)
先ほど紹介したトービンの分離定理が教えてくれるのは、投資を難しく考えすぎなくていいということでもあります。
リスク資産は、オルカンのような分散された株式でまとめて持つ。あとは、年齢やライフステージに応じて、安全性資産との割合を少しずつ調整していく。それだけで、「増やす」と「使う」を無理なく両立させることができます。
取り崩しとは、資産運用の終わりではありません。人生を味わうフェーズへの、自然な移行です。使うために増やし、増やすために使う。その思想を、現実の行動に落とし込む。それが、取り崩しというプロセスなのだと思います。







