米バーボン業界は在庫の山、禁酒法以来の苦境ルイビル近くにある試飲室でグラスに注がれるジムビーム

【ルイビル(ケンタッキー州)】米ケンタッキー州のバーボン地帯の中核を担う蒸留器は、大きな白い文字で「アメリカで最も働く蒸留所」と書かれた建物の中にある。ここでは約93秒ごとに「ジムビーム」が1樽(たる)生産される。

 だが今年1月以降、高さ約20メートルの蒸留器は稼働を停止している。停止期間は少なくとも2027年まで続く予定だ。

 同州ルイビルの南方に広がる約170ヘクタールの敷地内には、買い手がつかないかもしれない暗褐色の酒が詰まった樽が倉庫に所狭しと並んでいる。蒸留所の従業員は瓶詰め作業に配置転換された。この蒸留酒メーカーはフレーバー系バーボンの販売強化など新たな販売方法を模索している。南北戦争(1861~65年)以前に創業し、禁酒法時代(1920~33年)も乗り越えてきたジムビーム――現在はサントリーホールディングスが所有――は、また新たな低迷期を戦い抜こうとしている。

「とても感情的になる」。そう語るのは、創業家の8代目でジムビームのマスター・ディスティラー(蒸留責任者)を務めるフレディ・ノー氏だ。ジムビームは世界で最も売れているバーボンブランドである。「極めて重要な話し合いを重ね、家族が造ってきたものを長期的に成功させるための決断を下してきた」

 バーボンの発祥地は今、バーボンの在庫であふれかえっている。森林に覆われたなだらかな丘陵が広がるこの一帯は、米国の酒類業界を苦しめている景気減速の震源地となっている。大小さまざまな蒸留所が従業員を解雇したり、完全な閉鎖に追い込まれたりしている。樽のサプライヤーでさえその影響を受けている。