税務署が見る「孫への1500万円贈与」、大損する人のNG勘違い
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを著書『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋し、お届けします。
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税務署が見る「孫への1500万円贈与」、大損する人のNG勘違い
本日は「相続の最新トレンド」についてお話をします。ゴールデンウイーク中、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。
祖父母などが孫のために教育資金をまとめて渡せる「教育資金の一括贈与」は、相続税対策としても注目されてきた制度です。しかし、この非課税措置は適用期限である2026年3月31日をもって延長されず、2026年4月1日以後は新たに特例の適用を受けることができなくなりました。これから新しくこの制度を使おうと考えていた人にとっては、すでに大きな節目を迎えたことになります。
この制度を理解するうえで、まず押さえておきたいのは、教育費そのものはもともと一定の範囲で贈与税がかからないという点です。親や祖父母などの扶養義務者から、生活費や教育費として通常必要な金額を、その都度直接渡すのであれば、もともと贈与税の対象にはなりません。ただし、数年分をまとめて先に渡してしまうと、原則として通常の贈与とみなされるため、そこに使い勝手の悪さがありました。
最大1500万円まで非課税! その仕組みは?
そこで使われてきたのが、教育資金の一括贈与の特例です。この仕組みを使うと、直系尊属から教育資金としてまとめて贈与を受けても、一定の手続きを踏めば最大1500万円まで贈与税が非課税になります。利用するには、金融機関で教育資金口座を開設し、教育資金非課税申告書を提出したうえで、実際に教育費として支出したことを領収書などで確認してもらう必要があります。便利な制度ではあるものの、専用口座の管理や書類提出が必要になるため、決して手間のかからない制度ではありませんでした。
もし、孫が3人いたら?
それでも人気があったのは、相続税対策として即効性があったからです。たとえば孫が3人いれば、それぞれについて要件を満たすことで、1人あたり1500万円、合計4500万円まで贈与税が非課税となる可能性がありました。ただし、口座に入れた金額がすべて無条件に非課税で確定するわけではなく、教育資金として使ったことの確認や、贈与者死亡時・契約終了時の課税関係には注意が必要です。
では、いま気になるのは、「すでに使っている人はどうなるのか」という点でしょう。ここは誤解しやすいところですが、今回終了するのは、あくまで新たな教育資金管理契約を結べる期間です。言い換えれば、今回の終了は新規利用の打ち切りであって、すでに契約して口座を使っている人が、3月末で直ちに使えなくなるという話ではありません。既存の契約については、これまでの制度の枠組みに沿って管理・終了のルールが動いていくことになります。
つまり、すでに口座を持っている人は、制度の新規受付が終わることと、自分の口座がただちに消えることを混同しないほうがいい、ということです。
注意点! 知らないと損するポイント
もっとも、安心しすぎるのも禁物です。この制度はもともと、使った分だけが教育資金として認められる仕組みです。口座に入れておけば何でも自動的に非課税になるわけではなく、教育費としての支出を証明できなければ意味がありません。さらに、契約終了時に使い残しがあれば、その残額に課税関係が生じる仕組みもあります。既存利用者にとって大事なのは、「終わるらしい」と慌てることではなく、自分の口座が今どの状態にあり、これから何に使い、どの書類を残しておくべきかをきちんと確認することです。
教育資金の一括贈与は、制度としては幕引きに向かいます。ただ、それは新しく乗る人のための入口が閉じるという意味であって、すでに乗っている人までいきなり振り落とされるわけではありません。これから重要になるのは、新規利用はできなくなる一方で、既存利用者はこれまでのルールの中で引き続き管理していく、という違いを正確に押さえることです。制度終了のニュースが出た今こそ、すでに口座を持っている人は、自分の契約内容と使い方を落ち着いて見直しておくべきでしょう。
(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)







